あふれてしまう、そのまえに。 (ページ24)

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「ほら、困らせてどうするんだい。

Aさん、気にしないで。

今のは聞かなかったことにしておいてくれないかな。」

困ったようにそう言うオーナーの言葉に

それは到底無理だと思いながら

はい、と答えるしかなかった。

たまらない、って、なに？

そんなこと
未だかつて言われたことないけれど、

本当に私のこと？

もしかして色々な所で勘違いがあるのでは…

クローズの時間になる少し前に
今日はちゃんとお会計を済ませ、

2人に見送られて店を出る。

あの雨宿りの日以来、

Aは学校への行き帰りに、
遠回りはやめて
いつもの道を通るようにしている。

だから、2、3回ほど、挨拶程度なら交わしていた。

たまたまお客さんを見送った後や、

買い出しから戻ったのであろう時。

こうして見るとこの店は
営業時間中はとても忙しそうだ。

忙しそうなのに
Aを見ると

「Aちゃん！」

絶対に手を止めて、口を四角にして嬉しそうに笑う。

ぶんぶん、音が鳴るくらい手を振る姿を見ると、

実家にいる犬を思い出す…。

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