あふれてしまう、そのまえに。 (ページ19)

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キム•テヒョンは、

韓国人だそうだ。

今まで韓国人の知り合いがいなかったが、

一般人(おそらく)で、あの容姿は普通なのだろうか。

いや、きっと、特別なはず。

丁寧に丁寧に彫った彫刻品のような顔

特別色白ではないけれど、陶器のような肌に

さらり、と流れる髪

すらりと気持ちよく伸びた長い手足

一重の吸い込まれるような瞳は
濡れているみたいで

一体どうやってできているのか

道を歩いたら、男女問わず振り返るだろう。

そして、なんというか、不思議なひと。

雨宿りの帰り際、

Aが見えなくなるまで

ぶんぶん両手を振っていた姿を思い出し

つい笑みがこぼれる。

ーテヒョンくんは、この春からここで働いてるんですよ。
とても働きものでね。ー

マスターが話していた。

この春から、あの店に就職でもしたのだろうか。
若そうだけれど、何歳だろう。

それまでは韓国にいたような話の流れだった。

日本語って難しいだろうに、
上手に話す。

働きものだということだし
頑張れる人なんだな。

「神は何物をも与えるのね。」

やっと終えた、資料作成。
なくしたデータをバックアップしていてよかった。

ふと机の上から窓の外に目を向ける。

そう遠くない距離に、

山が見える。

空が白んできている。

寝ていないのに
なぜか頭はすっきり冴えていた。

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