Message in a bottle【叡智】 (ページ27)

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7月13日ページ27

あなただったか、とカンジは便箋から顔を上げた。
　昼間。早めに昼食をとったカンジは、腹ごなしがてら昨日の運搬作業の続きをしていた。しかし途中で休憩、と人通りの少ないこの部屋の壁にもたれ――そういえば、と昨日の手紙を思い出したのだった。昨日からあまり作業は進んでいないようで、例のコンテナはすぐに見つかった。
　昨晩、まどろみの中で行った応答。夢と想像のあわいのような時間で得た答え。「あんなことが書いてあった本を昨日読んだか？」と朝から昨晩読んだ本を全て読み返したのだったが、どれもしっくりとくるものはなかった。
　けれど、また今日この手紙を読んでみて合点がいった。『私がこうして今、想いを稚拙ながら表せているのも、文字が与えられているからに他なりません』――勉強すべき事柄は、全て誰かの願いがあって残されているものだから。自分の推理がなかなかいい線をいっていた気がして上機嫌になる。渾身の記述問題で満点をもらえた気分だ。
　そして不思議なことに、手紙を読んでいるときに文字を言葉として脳内にこだまさせる音声は、昨日彼の問いかけに応えてくれた声とよく似ていた。決してカンジ自身の声ではないが、知り合いの誰の声にも似ていない声。一人称が「私」で、丁寧な字で綴られているからだろうか。カンジは昨晩より明瞭に「その人」の姿を思い浮かべることができた。顔立ちや髪型といった詳細までは描けないが、何となく女性だろうと思った。落ち着いた空気の女性。彼女は、カンジの頭の中で静かに座っていた。けれど喧騒を拒むようなそぶりは見せない。むしろ、話しかけられることをわくわくと待っているようにも見えた。

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