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「おい、誰のもんに手ェ上げとんのや」
静まり返った店内で、彼の声だけが低く響いた。
ひっくり返ってなにがなにやら分からず大人しくなったサワタリの襟首を引っ掴んだその人は、「行くぞ」と後ろに付き従っていたガタイのいい男達を引き連れて、店から出ていった。
マシロは終始黙ったままでいた。
最後の付き人が「お嬢」と声を掛けるまで。
声を掛けられた瞬間に、サワタリへ向けていた黒い笑みを引っ込めて、普段の柔らかな笑顔を浮かべる。混乱しているであろう店内の人々にふんわり笑って『今日はこんまま帰りますわ』と言い放って、声を掛けた付き人と外へ出た。
我が店No.1の嬢は、ぶん殴られようが罵倒されようが去り際も淑やかであるな、とその場の全員が思ったのだとか。
店から出て、そのまま路地裏へと向かったマシロを含めた黒服御一行は、ただ黙って面布の男にボコボコに殴られるサワタリを見ていた。ごんごん頭を地面に打ち付けられながら殴られるサワタリは、既に人相が分からない程になっていた。
マシロはその姿を見て初めこそ、可哀想やな、なんて思っていたが、段々と先程自分が殴られたことに対しての不満が募っていくのを感じた。
ええな私も殴りたい、なんて考えるが面布の男が打ち付ける音を聞くと、それを止めてまで殴りたいとは言い出せない。それに、あれは彼の仕事だ。邪魔をしたら今度は自分が正体が分からなくなるまでボコボコにされる…
いや、されないか。
色々考えてそこまで思考が至ったマシロは、大人しく待っている黒服たちの横を1人飛び出して、たったとサワタリに馬乗りになっている面布の男の背後に行くと、唐突にその背中をぽか、と殴った。
『えい』なんて軽口と共に放たれた軽いジャブだが、自分へ触れてきたモノを無視する人間はそうそういない。
ぐるりと首を回して面布の男はマシロを見た。布の所為で顔色は全く伺えないが、口から零れた「あ"？」という不機嫌さ満載の声が、現在の彼の気持ちを強く代弁していた。
『若、お腹空いたしはよ帰ろーや』
付き人の黒服たちがわたわたと慌てる中、マシロは無邪気な笑顔を浮かべてそう言った。
そんな場違いなマシロを黙ってじっと見つめた後、サワタリから降りた男は、血濡れた手を振りながら呆れたように口を開いた。
「…散々こいつと酒飲んだんやろ」
『お酒じゃお腹溜まらんよぉ』
気の抜けるようなのんびりした声音でマシロは返した。
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ぽんず(プロフ) - ゆゆしきさん» んふふ。照れるネタ考えたんだから、せっかくだしぶち込め！精神で書きました。文章綺麗はまじで嬉しい褒め言葉ですありがとう。どんどん解像度上げてってもろて。 (7月24日 22時) (
レス) id: 1d8d6127fe (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - たじろぎレアちゃん本当に珍しくてこっちが死にそう、本当に文章綺麗でレアちゃんの解像度が私の中であがってきててとても嬉しい (7月24日 22時) (レス) @page4 id: 8adc159d64 (このIDを非表示/違反報告)
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