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『いや、ほんまにデカいわ』
「じゃあ返して下さいよ…寒い、」
『私も寒いから嫌やわ』
寒さで真っ赤になっている顔を見てしまえば、何も言い返す事ができない。元々、先輩であるAさんに生意気を言う事も出来ないのだ。端から勝ち目がない。
それでも寒いもんは寒いし、文句を言われるのにも心の中では不満が募る。
「…もー、厚着してきてや……」
『それはほんまに反省してる。ところでさチーノ』
「…なんすか」
『袖捲って。邪魔やねん』
スマホも弄れん、と不満げな顔でこちらを見てくるAさん。何度も言うが、自分で取っていって自分で着たんですからね貴方。
余った袖を振るうAさんと、によによと我関せずの笑いを浮かべたショッピ、両方ともに何かしらのちっちゃい不運が起きろよ、と呪詛を浮かべながらAさんに手を伸ばす。
右手側を折っていれば、空いていた反対側の左の袖で頭をぽす、と殴られた。当たり前だが、肉弾戦の殴られた程の痛みではない。ないが、気になるしぶっちゃけ邪魔である。
「…なんで叩くんですか」
『はよして』
「なんでか理由を聞いとるのに答えてくれないんですか」
『終わらせたら言うてやる』
それまでは私の袖がお前に攻撃し続けるからな、と何故か得意気な顔で言われた。俺のコートやし俺の袖やん、なんてアルコールを入れていないはずなのに頭の悪い事を考えた。
形を整えながら丁寧に折っている間も、ぺしぺし袖をぶつけられ続ける。宣言通りしっかり攻撃してくるやんけこの人。
『はーよはーよ』
「はよせぇチーノ」
「やったらお前も手伝えよぉ」
「俺関係無いもん」
間近に居ながらもどこまでも他人事のようにするショッピに、そろそろアッパーでも仕掛けてやろうかと思った。1人だけしっかり両手をポケットに入れやがって。
『チーノがんばえ』
「頑張ってますぅ」
『はよはよ』
「…ちょ、いた…今の痛い、」
『はよー』
「待って…待ってくださ……も"ー！！」
のんびりした声で応援してくるくせに、袖を振るのは止めてくれないAさん。眼鏡のフレームに激突して少し痛んだのを合図に、ついに苛立ちが沸点に達してしまった。
すると、Aさんはそんな俺を見て、んふ、と笑い声を洩らした。
「…なんで怒鳴ったら笑うんすか」
『……なんでもええやろ。内緒や』
「なんなんもー…」
結局、終始意味が分からないまま無事に両方ともの袖を折り終えた。
寒いし、文句は言われるし、叩かれるしで散々だったが、満足気にコートを纏ってぬくぬくとするAさんを見たらどうだってよくなってしまった。
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ぽんず(プロフ) - ゆゆしきさん» んふふ。照れるネタ考えたんだから、せっかくだしぶち込め！精神で書きました。文章綺麗はまじで嬉しい褒め言葉ですありがとう。どんどん解像度上げてってもろて。 (7月24日 22時) (
レス) id: 1d8d6127fe (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - たじろぎレアちゃん本当に珍しくてこっちが死にそう、本当に文章綺麗でレアちゃんの解像度が私の中であがってきててとても嬉しい (7月24日 22時) (レス) @page4 id: 8adc159d64 (このIDを非表示/違反報告)
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