・ ページ11
.
血みどろの男と、頬を腫らした女。
この2人は
ここら一帯を仕切る天錠会の若頭ロボロと、天錠会に嫁入りしたヤクザのお嬢A。
そんな関係値である。
嫁入りとすると聞こえは良いが、実際は天錠会に多額の借金を抱えた男が、その借金の代わりに娘を売ったのである。
物心ついた瞬間からガタイのいい黒服の元へ一人売られてしまった女児こそがAだ。
可哀想なとある女の子のなれの果て＿＿なんてことはなく。
『若、若。今日お肉食べたい』
「知るか！勝手にせぇ！！」
『なんでぇ。一緒にご飯食べようやぁ』
Aという人間、大変に強かな生命体であり、恐れられている天錠会若頭にこんなふうにダル絡み出来るのである。
ここまで来ると、肝っ玉がデカいというより、一周回って無いのではないかと思うほどだ。
ロボロは『なぁなぁ』と絡んでくるAに鼻を鳴らして背を向けた。そんなつまらない態度にむっとしたAは、彼が肩に掛けているスーツをするりと取り去った。
「あ"！？おま、返せ！！」
『いーやっ！』
「そこに居る奴がお前の上着持っとおからそっちにせぇ！！」
『やや！！』
Aは断固としてロボロの上着を返そうとしない。腕を通さずに彼の真似をして肩に掛けたそれを、ぎゅぅっと握りしめる。
持ってきた上着の何が気に入らないのか分からないロボロは、自分の中にイライラが重なっていくのを感じた。
「車にも別のん積んどる！そこまで我慢せ」
『若のがええから嫌やの』
ぷぅっと頬を膨らせてそんな事を言ったAに、ロボロは分かりやすく動揺した。面布で隠れているが、その頬にはさっと赤みが入った。
「ん、な…」
『今日頑張ったやん。ええやろ？あかんのん…？』
こてん、と首を傾げたAにどきりと鼓動が跳ねた。すぐ近くから香る淡い香りが、判断をぐらぐらと揺らしてくる。
「………っ」
『若？』
「…家、まで…やからな、」
顔をそっぽ向けてもごもごとそう言ったロボロに、Aはぱぁっと顔を輝かせて『わかぁ！！』と飛びついた。
きゃっきゃと抱き着いたAに文句を言いつつも、振り払う事はしないロボロ。
先程まで冷酷に男を殴りつけていた人間とは思えないその変わりよう。
天錠会では恒例の光景とも言える。
ロボロや付き人たち天錠会一同は、20数年前から毎日毎日こんなマイペース破天荒お嬢に振り回されているのである。
きっと今後もそれは変わらない。
＿＿＿＿＿
とりあえず早めに漫画を読んで、解像度を上げたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 108人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽんず(プロフ) - ゆゆしきさん» んふふ。照れるネタ考えたんだから、せっかくだしぶち込め！精神で書きました。文章綺麗はまじで嬉しい褒め言葉ですありがとう。どんどん解像度上げてってもろて。 (7月24日 22時) (
レス) id: 1d8d6127fe (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆしき(プロフ) - たじろぎレアちゃん本当に珍しくてこっちが死にそう、本当に文章綺麗でレアちゃんの解像度が私の中であがってきててとても嬉しい (7月24日 22時) (レス) @page4 id: 8adc159d64 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
