＿ ページ25
.
「Aさ、」
『終わった？』
いやそれこっちのセリフ、という言葉が出かかって急いで引っ込めた。まさか、全額Aさんが出した？いや、ビニール袋持ってここに居るんだからそうでしかないやん。俺アホなんか。
驚きのあまり我ながら変な事を考えて、自分でツッコんだ。
混乱する俺を無視して、Aさんは俺の横からひょっこり顔を覗かせて、スマホに口を寄せる。
『うるさいぞ〜珍獣共』
〈誰が珍獣じゃ！！〉
『主にお前やシッマ』
Aさんの登場で、電話の向こうが尚更煩くなる。さっきまで全く聞こえてこなかった、ショッピやゾムさんの声まで聞こえてきた。現金な人ら過ぎる。
『珍獣が何してようが知らんけど、もうコンビニ出たから追加は無理やで』
〈えっ嘘やん！もうちょい菓子頼みたかったんに！〉
『無理なもんは無理ですぅ〜。んじゃ、チーノと帰るから』
ちょっとまて、という声で溢れ返る電話をフル無視して、Aさんは通話終了ボタンを押した。
コンビニ前に静寂が広がる。車も通らないこの静寂は、彼女と2人きりである事実をひしひしと感じて、勝手に心臓の動きが早くなる。
緊張で身体が上手く動かない俺に気付かないで、Aさんは『のんびり帰ろか』と言って歩き出した。
来る時は楽しい感情しかなかったのになんで今はこんなに緊張してるんだ、なんて違う事を考えていた時、彼女の腕にぶら下がる大量のビニール袋が視界に入る。ぐるぐるとした思考が、一気に吹き飛んだ。
「ちょ、にも、荷物っ！」
『んぅ？』
Aさんはアイスを口に含んだまま、不思議そうな顔をして振り返る。大股で近付いて、その華奢な腕にかかるビニール袋に手をかけた。
「こんな重たいのいっぱい持ったら、腕折れますって！」
『何言うてんの。こちとら身体めちゃくちゃ丈夫やぞ』
「丈夫とか丈夫やないとかではなく！とにかく！全額出して貰ったうえに、荷物持たせるとか俺が嫌やから！！」
平気なのだが、という表情を変えないAさんを見ないフリをして、ビニール袋を彼女の腕から抜き去る。
平気だろうが平気じゃなかろうが、この際どちらでもいい。とにかくこのまま彼女に荷物を持たせたまま帰るのは、俺が許せない。
今度は遅れを取らないように、と一歩踏み出せば腕を引かれる感覚。振り返れば、Aさんが頬を膨らせてビニール袋の1つを掴んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みる - コメント失礼しますm(_ _)mいつも楽しく見させていただいています。お疲れ様です。リクエストなんですが、Hなお題がみたいです！これからも更新頑張ってください！ (1月13日 9時) (
レス) @page39 id: f9a14f71e4 (このIDを非表示/違反報告)
アスカミ - この作品に感銘を受けたのでリクエスト失礼します。なんというか…怖がりな人と夢主を、近くのお化け屋敷に連れ込むっていうのが見たいです。強がっているのを夢主に(夢主も怖がりつつも)笑われて欲しい… (1月11日 7時) (レス) @page39 id: 6edaad17fd (このIDを非表示/違反報告)
イチゴパフェ - コメント失礼します。ぽんず様の作品凄く好きです。更新速度など気にせず毎回楽しみに待ってます。応援してます！ (8月31日 14時) (レス) @page35 id: c71ff5e149 (このIDを非表示/違反報告)
夕@脅威 - リク？っていうか、微えrとかどうですk((((( (8月22日 18時) (レス) @page33 id: 4f40691f9e (このIDを非表示/違反報告)
リツキ(プロフ) - コメント失礼します。ネタ提供というかリクエスト？に近いのですが…私が友達とやった時に出た命令は、何分一緒に昼寝する、とか、何ターン膝枕/腕枕するというような内容でした(〇番が〇番に、王様が〇番に、〇番が王様に)この作品でも見れたら嬉しいなと思います (8月17日 23時) (レス) @page33 id: 370e1ace2d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
