裏話 ページ23
絵心side
『………さ、む……』
先に資料でも渡しといてやろうと思い、選手どもがフリーの時間に入ったあたりでモニタールームを出て、Aの部屋に向かった。
一度ノックはしたが返事がなく、そのまま試しにドアを開けてみれば開いた。
ついでに不用心さも忠告しておいてやろうと近付いてみれば、机に突っ伏して寝ている。
朝登校中に
少しぐらいは待ってやろう。ついでに寝言も聞いといてやる。
そう思ってタブレットを弄っていた時の第一声が1番上のやつになる。
寒い…?毛布でも引っ掛けて寝れば良いものを。
こいつの為に態々動くのも癪だが…まぁ今回だけだ。
纏めて畳まれている布団から毛布を引き抜き、肩に掛けてやった。
どのタイミングで、どうやって起こしてやろうか考えていれば、また声が聞こえた。
振り返って見れば、Aは自分で肩を強く抱いていた。爪が立たんばかりの強い力で。
その痛々しい姿は、前にも見たことがある。
記憶には蓋をしているようだが、夢に出てくるなんて。
こいつも、
これだから、人間関係は面倒なんだ。
タブレットを弄るのを止め、音を立てないようにAに近付き、そのまま頭を撫でてやる。
手の平に収まりそうだった小さな頭は、今では大きくなったが、その髪の感触は変わっていなかった。サラサラと指を抜けて滑っていく自分とは真反対の白銀の髪を、じっと眺めながら撫で続ける。
意味を成さないナニカを呟くその口が閉じるように、静かに静かに撫で続ける。
『…い、か……ぃで…』
伏せている所為で顔は見えないが、歪めているんだろう。
涙腺が壊れたこいつは、泣きたくても泣けない。どれだけ辛いと吐いていても、それを顔にはおくびにも出さない。
そんな奴に掛けてやる言葉は__。
その後すぐに起きたAは、寝起きの反射の遅さは相変わらずだが資料を渡せばそのまま読み出す素振りを見せたので、自分も黙って部屋を出た。
久々に他人に触れた。
何だかむず痒くて気持ちが悪い。
さっさと手を洗ってやろう。
.
.
「俺は居なくならない。」
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coco - 更新待ってる (12月29日 9時) (レス) @page32 id: 5b00a62990 (このIDを非表示/違反報告)
アンナ(プロフ) - お話面白いし絵も上手で尊敬します!応援してます!頑張ってください! (6月11日 2時) (レス) @page8 id: 61fc3359a9 (このIDを非表示/違反報告)
闇まんじゅう(プロフ) - お話めちゃくちゃ面白いし、絵も上手でも吃驚しました!頑張って下さい!応援してます! (2023年3月3日 20時) (レス) @page31 id: a2e3403032 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白いです!頑張ってください応援してます! (2023年1月1日 17時) (レス) @page18 id: 35aefc2ecc (このIDを非表示/違反報告)
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