現実 ページ22
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寒くて苦しくて、知らず知らずのうちに自分の肩を抱く。すると、肩に何か掛けられている事に気付く。
私、毛布なんか…そう思った時、頭に何か感触がある事に気付いた。
そこから一気に微睡みは薄れて、何も無かった真っ暗な空間は消え去り、目の前は茶色に覆われていた。
そうだ私テーブルで寝て…そんな事を考えながら、枕代わりにしていた痛む両腕を支えにして、脱力していた上半身を持ち上げる。突っ伏していた所為か、頭も重くておでこも痛い。
右手で目元を揉んで、寝ぼけ眼を擦っていると、近くに人の気配を感じた。
どうにかこうにか開いた目に映ったその人は
『え、ご…さん……?』
「やっと起きたか。」
何故絵心さんが此処に。
回らない頭を動かして考えるが焼け石に水。何も分からない。
顔洗いたいな、等と場違いな事を思いながら、聞いてみる。
『なんで、ここに…』
「選手達の資料だけでも渡しておこうと思ってな。」
こっちの方を見向きもせずに淡々と話す。その手にはタブレットが握られていて、なにやら操作している。
「車でも寝たくせに、此処でもいきなり寝始めるとはな。寝汚い。」
『…いきなり悪口言うの、得意ですね。』
私の脳も段々と覚醒してきたようで、この人の悪口にも返答出来るようになってきた。言われっぱなしは悔しいってのもある。
「とにかく、伝えたかったのはそれだけだ。明日からは1日中働いてもらうからな。睡眠不足なら、さっさと解消しておけ。」
『あてっ』
タブレットを軽めに頭にぶつけて来ながら渡してくる。嫌味が鼻についたらしい。仕返しがみみっちいな。
絵心さんはそのまま振り向きもせず、部屋を出て行った。
私が寝ているのを無理やり起こさない辺りはいい人。多分肩に毛布を掛けてくれたのも絵心さんだろう。だがしかし、普段の態度がなぁ…うん、、なんとも高圧的。
もう少しどうにかならないもんか。すぐにパワハラで訴えられてもおかしくない人間性。危ないぞ。
あーでも、絵心さんの軽口の所為かお陰か分からないが、見事に夢の内容は消え去った。
いつもどんな夢を見ても覚えていられないから、少し勿体ない気もした。
まぁ、夢は夢。どうでもいっか。
絵心さんから受け取ったタブレットを手持ち無沙汰に弄りながら、1人部屋の中でそんな事を考えた。
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coco - 更新待ってる (12月29日 9時) (レス) @page32 id: 5b00a62990 (このIDを非表示/違反報告)
アンナ(プロフ) - お話面白いし絵も上手で尊敬します!応援してます!頑張ってください! (6月11日 2時) (レス) @page8 id: 61fc3359a9 (このIDを非表示/違反報告)
闇まんじゅう(プロフ) - お話めちゃくちゃ面白いし、絵も上手でも吃驚しました!頑張って下さい!応援してます! (2023年3月3日 20時) (レス) @page31 id: a2e3403032 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 面白いです!頑張ってください応援してます! (2023年1月1日 17時) (レス) @page18 id: 35aefc2ecc (このIDを非表示/違反報告)
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