初恋の君 2 【モーツァルト】

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＿＿僕が20の時

アロイジアという女性に恋をした

Aとは16歳の時からずっと会えていなくて、その寂しさを埋めたかったんだと思う

結婚は父親に猛反対され、パリに行くように言われてしまった

でも

パリにはAがいる…

またAに会える…

そう思って僕は喜んでパリに行ったんだ


でもそれからの生活は悪夢だった

なかなかお金は稼げないし、一緒に行った母親は亡くなってしまった

Aとも会えなかった


それからいろいろあってウィーンに定住する事になった

演奏会を開いたり、楽譜を売ったりして生活していた

ある日、近くで演奏会が開かれ、僕の曲が演奏されると聞いて行ってみた

有名な音楽家ではないみたいだけど、とてもピアノが上手で、この辺では少し話題になっているらしい

「…なんか聴いたことあるような音色だなぁ」

サラサラと流れていく音は優しく、儚くて、でもしっかりと落ち着いていて

不思議な音だ…

演奏会はあっという間に終わり、帰ろうとすると

「ねぇ、ご存知？今日の演奏会、匿名の方の演奏でしたけど、あの方、ジル様の妹君なんですって」

そんな噂話が聞こえた

ジル…？もしかして…！

「ジル様って…あの有名なピアニストのジル・ブレーズ様のこと？」

「ええ、妹さんがいるなんて初耳でしたから驚きですわ…Aさん、っていうんですって」

やっぱり…Aの演奏だったんだ…

今から行ったら…会えるかな…？

「ああ、私、A・ブレーズさんなら知っているわ、確か…大貴族のレオ・グルーバー様とご婚約なさるって話よ」

「レオ様と⁉あの方と結婚できるって…それだけで幸せよね…」


Aが…結婚…？



…そっか、いつまでも引きずってたのは僕だけか

普通は5年も会ってない人の事を想い続けない、下手すれば忘れてる

自分が相手を好きなら、当然のようにそれは返ってくるものだと思ってた

でも、そんなの違った

そっか

僕の初恋はこれで終わりか

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