【文スト夢】007の失踪〜俺の失踪届けも出せ〜

推理ゲーム　１ ページ19

「それで、ゲームと言うからには 勝ち負けがあるのでしょう？ ルールをおしえてください」


“結果によっては”という条件付きだけれど、囚人番号0463にとっては、自分についての情報を得られるまたとない機会だ。乗らない手はない。それでも足元をすくわれては終わりである。青年はあくまでも慎重な姿勢を崩さない。


綾辻先生は 予想通りといった様子で、少しだけ口角を上げた。


「そう構えるな。単純に謎解きに勝てたら貴様の勝ちだ。その推理力が戦力になると判断すれば、ありがたく使わせていただく。――辻村君」


私は先生の指示通り、青年の前に『林間学校殺害事件』のファイルを出した。……ついこの間、先生が実際に解決した事件にして、京極の関与が疑われている凶悪事件だ。

今でも、大聖堂の真ん中でステンドグラスに貫かれた犯人の表情を思い出すことが出来る。


「俺に対する質問は3回までだ。事件を実際に目の当たりにしていないというペナルティを防ぐ意図がある。ただし殺害方法に直接関与する事や、犯人は誰か といった露骨な質問には答えない」


綾辻先生はあくまでも公平に、と云う姿勢を示している。しかし、先生がしかける推理遊戯が公平であるはずがない。この事件ファイルには、意図的に記述されていない事象がある。その情報がなければ、答えを導くことはできないのだ。


「適切な質問を出来るかどうか、それも判断材料に含まれるということですか」

「さて、何のことだろうな」


彼はすぐに先生の意図を理解し、眉をひそめた。心底楽しそうに笑う綾辻先生に苛立ちが襲ったのか、青年は些か乱暴に資料を受け取った。


「仮にも探偵なら、遊びと称して事件をほじくり返すことに罪悪感はないのか？」と言いたげな表情だった。


「事件は、さる山間の礼拝堂において起こった。犯人の候補は全部で十一人、小学校の教職員から施設関係者の事務員を含めての数だ。その中から見つけ出せ」


ファイルには、教師一人一人の供述したアリバイや 犯行の状況について書かれている。


生徒数は六十八人。その中から一人、意図的に選択して殺されたと云うことは、明確に殺意がある証拠だ。教員が一人の生徒を狙って殺すだなんて。改めて考えても、気分の悪い事件だと思う。


青年が資料を読み始めたタイミングで、私は綾辻先生に小声で尋ねた。聞かないわけにはいかない。


「それで。――あの青年の正体は一体何なんですか？ こんな推理ゲームの結果で、彼を捜査隊に加えられると本気で思っているんです？」

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