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徒花の散る頃《弐》 ページ41

芥川は息を呑んだ。

急いで自身の腕を確認すると、同じような痕がはっきり残っている。【薔薇の異能者】との戦闘を意味する証が。


「ああ。やっと視やがったか。――手前の今考えたままだよ。あの女に喧嘩売ってきたんだ。奴に破れた芥川を救うためにな。」


ひょうきんに聞こえる言葉の並びが、不安定にゆれる。


『特務課に、喧嘩を売っても良いのですか』
『それならば何故、千代も助けなかったのですか』
『なぜ千代を、置いていったのですか』


芥川の脳裏で、いくつも言葉が浮かんでは消えた。
しかし声にはならない。中也の顔を見るなり、途端に声を失ってしまったからだ。


―――中也は、芥川の知る表情ではなくなっていた。


不安定に震える声とともに、無理やり合わせた視線の先で、瞳がどろどろに揺れていた。


「相変わらず運の悪い奴だ。思えば、手前が最初に病院に着いたタイミングから最悪だったしな。まさか人員の避難中に顔出しちまうとは、流石に姐さんも考えてなかったんじゃねえか?」

「……最初?」


ふと、【薔薇の異能者】の無機質な声が蘇る。彼女の言葉には、引っかかることがいくつもあった。


『病人の移動だなんて、お墓よりずっと融通が利かないじゃない。それなのにみんな逃すだなんて。マフィアの諜報はよほど優秀なのね』

『……それなのに、どうしてこの子だけ置いてきぼりにされてたのか。理由はわかる? 一瞬罠かと思ったの。これじゃあアッサリ殺してくださいって云ってるようなものじゃない』


諜報が何故、足立だけを避難させなかったのか。


その命令を下した首領も、実行していた紅葉も、一体何を考えていたのか。


わざわざ敵から芥川を奪い返しておいて、なぜ共に居たはずの足立は救助されなかったのか。


「まさか、」


芥川はうめいた。


「……千代助をわざと病院に残したのは。特務課に奴を拐わせるためですか。貴方も、その作戦通りに動いていたとでも?」




「姐さんから連絡が入ったぜ。潜入成功だそうだ」


通信機を耳につけ、マイクから口を離した中也は、無表情で言った。


「囮作戦には役立ったみたいだぜ。あの裏切者(、、、)

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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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