瓶詰めの地獄《弐》 ページ17
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「監視カメラも何度も確認した。だが、何度繰り返してもQが自分で扉を開けて、出て行ったようにしか見えねえんだよ。
Qの皮下組織にうめこんであるチップでも、野郎は本部の敷地内を出てないことになってやがる。
おかげで警報もならねえもんだから、誰も気が付かないときた。…代わりに真っ先に気が付いた、稲生は。あのザマだ」
解呪の力を唯一持っていた男が消えた現状、呪われれば『最期』だ。
「……Qの地下牢を破壊した人間は、組織の壊し方をよく解っている。まるで太宰さんの様だ」
嫌な、胸騒ぎがする。二人は動脈が波打つのを全身で感じていた。
飛び交うあべこべな指示による現状把握の遅れ。Qの呪いそのものが、脅威に発展する状況。
どれもこれも、太宰治が幹部として在位していた時分には、無縁のことであった。
わずかな沈黙の間にも、階下を駆け下りる泥靴の音が響いている。濃い火薬の残り香が、せわしく通り過ぎていった。
「彼らはどこへ向かっている」と芥川は云った。
「Qがどこへ居るとも判らぬうちに、なぜ本拠地を留守にできる。……この状況の本部を留守にせねばならぬほど、凶悪な敵が現れたとでも?」
傷つけたものを、意志とは関係無しに無差別に呪う。
精神を冒涜する殺戮マシーン・夢野久作は、厳重体制の本部を、今も自適に歩き回っているという。これを放置しなくてはならないほどの敵とは何者なのか。
「いや。極道にもなりきれねぇ、そこいらのチンピラだ。傘下組織の場末の連中が、拠点のあちこちで暴れてるんだとよ」
よほどの強敵かと身構えた芥川に、中也は真顔であっさりと云った。
「逆に言えば、鉄砲玉にもならねぇ兵六玉だろうが、本部から人材を引っ張り出すようなな暴れ方ができるんだよ。兵士が雑魚でもカシラは一騎当千の軍師だ。……情報もあまりに正確すぎる」
中也の話に誇張がないのは、一目瞭然だった。芥川は殺気を隠さずに訊ねる。
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時