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瓶詰めの地獄《壱》 ページ16

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芥川が病院から戻ると、本部の構内は慌ただしい殺気が立ち込めていた。


誰ひとりとして芥川の方を振り返ることなく、怒声混じりの指示とともに走り回っている。


見る者全てが武器庫から持ち込んだ銃器を装備し、精鋭部隊さながらに駆け抜けていった。


「芥川!」


エントランスの中心に来た瞬間、よく通るハスキーな声が芥川少年を呼んだ。中原中也の声だった。


「良いから来い、こっちだ」


ようやく鮮やかな朱色と帽子が目に入ったところで、人気のない武器倉庫の階段裏まで走り出す。


目を合わせるだけで、ねぎらいの言葉はない。優先すべきことは互いに同じだった。


「手前も既に聞いていると思うが」


姿勢を整え、中也は本題を切り出す。


「……Qの地下牢が、何者かによって破壊された」


芥川の腕を握る手が、皮袋が擦れてギュウ、と鳴る。


常に浮かべる余裕げな微笑が封印されているぶん、話の深刻さが伝わった。


「いや。破壊されたならまだ良い。―――Qは勝手に出て行きやがったんだ」

「出て行った?」


芥川は驚きより、困惑をにじませていった。


「あの厳重な警備を掻い潜って、ですか」


 ―――異能の中でも最も忌み嫌われる “精神操作” の能力。


中でも夢野久作の異能力、ドグラ・マグラは、災害といっても良い破壊性を有している。


自分を傷つけた相手を『呪い』、受信者の精神を幻覚によって発狂しさせる。一度発動すると歯止めがきかず、敵味方問わず無差別に襲いかかってしまう。


正に、厄災。


この異能者を地下牢に閉じ込めるだけで、何人の命が奪われたのか、いまだに正確な数を把握できないほど。そのように、新参者の芥川も語り聞かされていた。


Qの呪いを止められるのは、ただ一人。異能無効化の力を持つ太宰治のみ。


しかし、太宰を失ったマフィアが、Qの地下牢の監視を手薄にするはずがない。更に強固になっていたはずだ。

 
警備事情に明るくない芥川であっても、この状況があまりにも異質であることに驚きを隠せなかった。

瓶詰めの地獄《弐》→←おしからざりし命さえ《伍》



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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