死の味がする生の幸福《六》 ページ17
◆
尾崎さんに成り変わった後、俺はQの地下牢をすぐに破壊した。この作業が最も簡単だったと言っても良い。
外側からの侵入防衛には一家言あるが、内側の防御については十分と言えない。
設備に問題はないかも知れないが、問題は、人員のほうにある。
まず爆薬と化合した紙を監視員の懐に忍ばせ、軽く衣服を焦がすほどの小爆発を起こす。
慌ててネクタイを外したタイミングで――ネクタイピンを中心に大爆発。
彼らの手から離れていたネクタイピンはたちどころに警備システムを刺激させ、防衛のために一斉に攻撃が始まった。
彼らは大声を上げて逃げ惑う。それからまもなく、自己防衛のために、機関銃やら監視カメラを手当たり次第に壊し始めた。
防衛システムの破壊を自らの手で行なっていく様は滑稽だ。
この後映像を改竄して、Qの地下牢であったこと自体が、押し並べてなくなっていくのだろう。それを見破るような
こうして自然と俺の仕事は少なくなっていく。
統率を失った荒くれ者の集まりとは、得てして忠誠心を失っていくものだ。
それから俺は、監視カメラがぶち壊れた隙間を狙って、小さな紙を飛ばす。
『あそびましょう』と、いかにもエリス嬢らしい文字を真似て書けば、Qはすぐに彼女からの手紙だと判断した。
古時計の下から続く「先代の部屋」を彼らの遊び場として提供している俺は、彼をすぐに部屋へ招き入れてやることに成功した。
それまでのQの脱獄が上手くいくか、などと憂う必要はない。通り道のなる地下通路と監視カメラの破壊なら既に済ませているが、それも過保護すぎるかもしれない。
こればかりは、上の連中もわかるまい。
Qちゃんと親しい俺にしかわからない秘密だ。
顔を合わせるたびに、二人して「逃走経路をいかにして作るか」を模索しているだなんて。
彼は容易く電子ロックを解除して、檻の外へと飛び出していったことだろう。
Qちゃんが来るまでの間、末端の組織に宛てて一斉にメールを送ることも忘れない。
警備の疎かになっている武器庫から、支配が及んでいない市場規模まで事細かに情報を送ってやる。
警備状況の資料まで送ってやれば、俺のすべきことはない。彼らは自然と反乱に向かうため、意気揚々と武器を手に取った。
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伊織 - いえいえ!!私が気にしすぎてるだけなのでw お忙しい中目を通してくださってありがとうございました! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» また、先述のとおり、多忙につき反映が難しくなってきたため、誤字報告・指摘の窓口は一度閉めることになりました。 せっかくのコメントに、不誠実な対応をすることになっては心苦しいからです。。。 忍びないのですが、今後は「まあいっか!」で流してください( ; ; (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - そこまで読んでくださった方がいるとは……!誤字報告ありがとうございます!多忙につき、反映に時間がかかると思いますが、物語として重要なシーンなので訂正いたします!ありがとうございました!! (2021年5月22日 12時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - モールス信号なのですが...紹介ページ?みたいなところ、オじゃなくてエになってると思います。オは「・−・・・」かと...図々しくもすみません...! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - いつもありがとうございます!!これまでの芥川少年の行動を振り返ってみると「?!」の連続ですよね…笑笑 足立も芥川関係になるとグッズグズになるので五分五分かと思いつつ、やべえなと書いてる自分も思う時があります。 (2018年12月11日 19時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2018年7月8日 15時