【文スト夢】007の失踪≪２≫〜俺の失踪届けも出せ〜

Let's just smile and say goodbye.　１ ページ14

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坂口安吾は、報告書の山から目を伏せ、深いため息をついた。


安吾は異能特務課の拠点の一つである、支局に足を運んでいる。ポートマフィアを監視する目的で横浜湾岸部に設置されているためか、警備の層は種田官長がいる本局と大差がない。


今、彼が手に取っている報告書の書き手は、安吾の直弟子である辻村捜査官である。


彼女が担当する『井戸の調査』の報告は順調な様子だったが、もう一枚の方が良くない。何度も目を通した部分を思わず口に出して読んでしまう。


「綾辻先生が、３ｍ以上もあるフェンスに駆け上って、銃を互いに向けた夫婦をめがけて大根を投げつけた」


ぐしゃり、と資料をつぶす。安吾には既に、大根の投げ手である人物の特定ができている。


「一体、どういうつもりで僕たちに協力をする気になったんです。一之君」


新人エージェントであり、虫食いになった記録を持つ007、梨木香歩。彼女が殺害された現場で、安吾が過去視をした際に映ったのは、よく似た格好をした男女が、マンションの一室で向かい合う光景だった。


彼女が殺害される寸前まで会話をしていたのは、間違いなく足立一之だった。まだ足立が変装を学んでいるころから彼を知っている安吾には、それがわかる。


何の目的で、エージェントの容姿に寄せた格好をしていたのか。精神科の病院に、変装をした状態で入院をしていたのはなぜか。――マフィアの精神科病棟に、軍警が押し入りを果たしたのはなぜか。理由はまだわからないが、足立一之が特務課に接触を図っているのはたしかだ。


『たとえ、私たちが命を懸けて、娘たちを救っても。ただ、子供たちに親を殺してしまった罪悪感を植え付けてしまうだけなんですね。』

『意識を失う前に、誰かに叱られた気がするんです。生き残った子供たちに、親殺しの罪を着せるな、と。』


「君は相変わらずですね」


目を覚ました夫婦の言葉が、報告書の上で踊るように存在を主張している。自然と過去の即発され、足立との出会いと決別が鮮明によみがえった。


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