帰る客と 招かれざる鬼《参》 ページ32
「へぇ〜 なるほどなるほど。本当に その子供のことが心配だったんだ!
…あれが勿論、演技ではなく」
「…………。」
「……顔上げなよ。いつまでもそうされてると、私が生徒さんを誘拐したみたいで気分が悪いのだけど」
相変わらず憎たらしい口振りだ。
道化と戯けの中に、彼の前職を知る自分にとっては馴染み深い−−−しかしカタギとなった今の太宰さんにはそぐわない、冷酷で残忍な心象が混ざっているのを感じる。
人間を人間とも思わないくせに、やけに人間という生き物を知り尽くしたモノ。
……そのくせ倫理道徳から嫌われたかのように振る舞う、獲物を嬲る獣の目だ。
こんなことがあるから、俺は未だに この人がカタギに戻ったというふうに思えていない。
この人間に赤い血が流れてなどいない…そう言えば、きっと彼に心酔するあの男には苦言を呈されるに違いないけれども。
特務課の顧問探偵に『凍った血の死神』という 俺が知る限り(裏社会も含め)一番物騒なアダ名をつけられた野郎がいるんだが、この太宰治というやつはそれ以上に狂っているだろう。
「やっぱりさぁ、昔から思っていたのだけど…君って結構な人間だよね」
太宰さんは 俺の素の表情を眺め、猫のように瞳を細めた。
「自分を根性悪だと思い込んでさぁ、相当悪ぶった事をする割に 肝心なところで真面過ぎる。…その証拠に、たまぁに こうして素に戻ったときに 一般人みたいな顔をしてさ。
あぁ、酷い顔だとも。今の顔鏡で見てきたら?まるで自分で子供を殺しちゃった先生の顔をしているよ」
「…実際に見たことがあるって言い方ですね。……ええ。確かに似たようなものですけれど」
「心当たりでもあるの?」
「私に心当たりがなかったら、アンタ今頃ここにいないでしょう?
探偵社員の太宰さんはそれを聞きにいらっしゃった訳ですから」
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - ゆらりんごさん» こちらこそ、読んでくださってありがとうございました!! 自分一人だけの妄想だったものが、誰かの心に残ることができて本当に嬉しいです。これからも書き続けていきます! ありがとうございます!! (2022年6月17日 11時) (レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
ゆらりんご - 自分の中で一番好きな文字書きさんがアバンギャルド•マボさんです…!これからも応援してます!足立くんが好きすぎる…!!自分の人生に影響を与えたと言っても過言ではない…!(重たくてすみませんッ!) (2022年6月14日 23時) (レス) id: b1085cf676 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 限られた文字数での返答ですので、機械的な印象を与えてしまい申し訳ない!夢主の性格描写に好感を持っていただけて嬉しいです!!このシリーズにこれからもお付き合いください(о´∀`о) (2021年8月19日 2時) (レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - 不快にさせてしまい、本当にすみませんでした。作品、とても面白かったです!!特に足立君の性格がもう最高で...!こんな人惚れる以外の選択肢ないですよもう...! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 個人の創作物にコメントをする際は、他作の名前を出したり、比較をすることなく、ストレートに「面白かった!」だけを伝えるようにしてもらえるとハッピーな気持ちになります!! よろしくお願いします( i _ i ) (2021年5月16日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年6月23日 21時