無作為の作為《弐》 ページ31
俺の罪は 人殺しだけにはなかった。
俺は、どんな殺しの技術よりも 演技が圧倒的に秀でている。
俺がどれだけ自分が人斬りだと、こんな悪人なのだと説明しても、俺を一目で警戒し 殺そうとする人間など 今まで一人たりともあったことがない。
……いつのまにか、息をするように、誰かにとって一番 懐に入れて抱きしめたくなるような姿を演じているからだ。
俺の意識とは関係なく。
いつのまにか 誰かに愛された姿に変貌している。
…我ながら思う。誰にも害されぬ殺人鬼など恐ろしくて仕方ない。
だが この力は才能でも練習の賜物でもなく、もっともっと簡単なことで出来ている。
苦しい、寂しい、痛い、辛い−−−だけど笑う。
楽しい、嬉しい、喜びが溢れる−−−だけど怒ったふりをする。
気がつけば俺の世界は、そんなことの繰り返しでできていた。
端的に言えば−−−日常的に 息を吐くように嘘をはかねばならないような環境で育ったのだ。
愛情に満ちた環境で、何一つ不自由もなく、恵まれた家にいるために身につけた、 家族の誰も気づけないぐらいに巧妙に鍛えられた つつがない処世術。
大した頭脳や異能を持たぬ自分が 幾度も命を奪ってこれたのは、
ひとえに何者にもなれる 演技と嘘……
『一番愛してもらえる姿になる』姿へ自分を変えるのに、長けていたからだった。
そんな俺を嫌って、いつの間にか演じる俺の姿を何度も治そうとして、
自分でも忘れていた 己の姿を思い出させてくれたのは…
…今 目の前にいる、太宰さんだ。
この人には 嘘も騙しも 何も効かない。
俺の『無意識の作為』であっても嗅ぎつけてくるような化け物には、
何もかも正直に話した方が身のため。
そう思うと、 俺の口から、俺の言葉がするする流れ出るのを抑えることはできなかった。
「………貴方が聞きたいことは、なんなんですか」
もうどこまでが自分の演技だとか、気にしている余裕はなかった。
弱みを握られてもこの際どうでもいい。
「何を喋れば、生徒の所在を教えて下さるのですか」
俺は今 何者なんだろう。
…きっと俺なんだろうなぁ。
餓鬼のことが好きで好きでしょうがねえ ただの間抜けな塾講師を演じたつもりで 、結局俺は俺だったのかなぁ。
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - ゆらりんごさん» こちらこそ、読んでくださってありがとうございました！！ 自分一人だけの妄想だったものが、誰かの心に残ることができて本当に嬉しいです。これからも書き続けていきます！ ありがとうございます！！ (2022年6月17日 11時) (
レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
ゆらりんご - 自分の中で一番好きな文字書きさんがアバンギャルド•マボさんです…！これからも応援してます！足立くんが好きすぎる…！！自分の人生に影響を与えたと言っても過言ではない…！(重たくてすみませんッ！) (2022年6月14日 23時) (レス) id: b1085cf676 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 限られた文字数での返答ですので、機械的な印象を与えてしまい申し訳ない！夢主の性格描写に好感を持っていただけて嬉しいです！！このシリーズにこれからもお付き合いください(о´∀`о) (2021年8月19日 2時) (レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - 不快にさせてしまい、本当にすみませんでした。作品、とても面白かったです！！特に足立君の性格がもう最高で...！こんな人惚れる以外の選択肢ないですよもう...！ (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 個人の創作物にコメントをする際は、他作の名前を出したり、比較をすることなく、ストレートに「面白かった！」だけを伝えるようにしてもらえるとハッピーな気持ちになります！！ よろしくお願いします（ ｉ _ ｉ ） (2021年5月16日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アバンギャルド・マボ | 作成日時：2016年6月23日 21時
