お邪魔します、足立先生《参》 ページ17
「…俺の認識はな。蘭学者というよりも、太宰の入水現場に鉢合わせする度に 幾度も探偵社まで送り届けてくださる恩人だ。見ての通り慣れきってしまって…ついに太宰専用の、手ぬぐいまで置かれるようになってしまったか…」
あぁ、そういう…。
余計に落ち込む国木田先生に、戻ってきた蘭学者−−足立先生が苦笑しながら手ぬぐいを渡した。
「固ぇこたァ気にしなさんな、国木田先生。ご近所さんの縁でしょう。…おや?」
しばらくして、先生が玄関まで小走りでやって来た先生の声が止まった。
僕をみると数秒ほどかんがえこみ、それから 人好きの明るい笑みを浮かべる。
「………あれまぁ。新人さんかぃ?こんにちは」
「は、初めまして、あッ…新しく探偵社に入社した 中島敦、です!」
「えぇ、初めまして。私は先ほど紹介に預かりやした、折据塾 塾頭の 足立一之と申すもんです。その年でご奉公かい?立派だねぇ」
面と向かって声をかけられると ギャップに驚いてしまう。東京の下町出身なのか、特有の荒い口調。見た目とあんまりに そぐわないが 親しみを感じる言葉だ。
太宰さんの言う「ぽやん」とした人かは判らないが、人の良い気風なのだろう。
変人揃いなもんだ、色々苦労も多いだろ?と こっそり苦笑いで囁く足立先生は、大人を揶揄うような懐っこい子供の顔をしている。
僕は小学生相手の塾講師という側面に大きく納得した。
「まぁ 立ち話も難です。お入りなせぇよ」
お茶をお出ししましょう。
と 先生奥の部屋へ向かったのを見届けて、お邪魔しますと玄関に上がった。
「……人虎」
「…?」
その時、風鈴の音に混ざって 低い声で何やら呟いていたけれど、僕の耳までは届くことはなかった。
159人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - ゆらりんごさん» こちらこそ、読んでくださってありがとうございました!! 自分一人だけの妄想だったものが、誰かの心に残ることができて本当に嬉しいです。これからも書き続けていきます! ありがとうございます!! (2022年6月17日 11時) (レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
ゆらりんご - 自分の中で一番好きな文字書きさんがアバンギャルド•マボさんです…!これからも応援してます!足立くんが好きすぎる…!!自分の人生に影響を与えたと言っても過言ではない…!(重たくてすみませんッ!) (2022年6月14日 23時) (レス) id: b1085cf676 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 限られた文字数での返答ですので、機械的な印象を与えてしまい申し訳ない!夢主の性格描写に好感を持っていただけて嬉しいです!!このシリーズにこれからもお付き合いください(о´∀`о) (2021年8月19日 2時) (レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - 不快にさせてしまい、本当にすみませんでした。作品、とても面白かったです!!特に足立君の性格がもう最高で...!こんな人惚れる以外の選択肢ないですよもう...! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 個人の創作物にコメントをする際は、他作の名前を出したり、比較をすることなく、ストレートに「面白かった!」だけを伝えるようにしてもらえるとハッピーな気持ちになります!! よろしくお願いします( i _ i ) (2021年5月16日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年6月23日 21時