神の本気のイタズラ《弐》 ページ14
古き良き、とはこのことを言うのだろうか。そう言わざるを得ない 風情ある街並みの中を、探偵社の三人は歩いている。
豆腐を売り歩く行商人、外を駆け回るモンペを着た子供達。木造長屋の井戸では 和服を着た女性が多く集まって、何やら黄色い声で捲し立てている。
それは 眼前を歩く…比喩なしで、水も滴る良い男たちに向けられたものであるのは明白だった。
「いやぁ、やっぱり茶髪の子よ!」
「そうかしら、でも結婚するなら あの眼鏡さんが良さそうだわ。初心だったりしてねぇっ」
「可愛いわねぇ!!…、〜…」
あのぅ、ちょっとだけ今は 声のトーンを落としていただけないかな、なんて。と敦は心の中でそっと呟いた。
「…誰が初心だ、誰が!」
初心で余計に腹が立ったのか、眉に深い深いシワを寄せて歩く国木田を見かねて、敦はぽつりと声を掛ける。
「…さっぱり目撃情報がありませんね。これで最後の聞き込みでしたよね?」
「あぁ。…もう近所は廻りつくした。残るのは此処だけだ」
ただでさえ全身ずぶ濡れで機嫌が悪いのに、更に 事件に なんの手がかりもないことに 国木田の沸点は徐々に下がっていくのが目に取れる。
加えて その原因となった人物、入水常習犯の太宰は なんの悪びれもなしに 鼻歌を交えて歩いているのだから、国木田が爆発するのも時間の問題だろう。
「みんな、如何して そんなに暗い顔をしているんだい?これからタダで茶菓子を戴けるというのに」
…そして何より国木田を沸騰させたのは、この一言だった。あの太宰がいつになくやる気を出し、最後の聞き込みは此処しかない!と これから向かう場所に白羽の矢を立てたのだが…一瞬頼もしいと思ってしまったが故に 疑惑の念は怒りに変わる。
まさか、茶菓子の為だけに 此れ程歩かされたのか?ずぶ濡れで、カール・ロイス氏手製の手帳もぐちゃぐちゃになってるのに。
「だっ…太宰ぃいい!!貴様というやつは!!」
「別に茶菓子だけじゃないさ。…あの先生、優しいからタオルも貸してくれそう」
「〜〜〜ッ!!!」
「あ、あれ!! 塾って書いてありますよ!被害者の子が通ってたのって 彼処じゃないですか??」
敦は 爆発寸前の国木田を その一言で
どうにか収めると、二人がこれ以上騒ぎを起こさないように 間に割って入った。
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - ゆらりんごさん» こちらこそ、読んでくださってありがとうございました!! 自分一人だけの妄想だったものが、誰かの心に残ることができて本当に嬉しいです。これからも書き続けていきます! ありがとうございます!! (2022年6月17日 11時) (レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
ゆらりんご - 自分の中で一番好きな文字書きさんがアバンギャルド•マボさんです…!これからも応援してます!足立くんが好きすぎる…!!自分の人生に影響を与えたと言っても過言ではない…!(重たくてすみませんッ!) (2022年6月14日 23時) (レス) id: b1085cf676 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 限られた文字数での返答ですので、機械的な印象を与えてしまい申し訳ない!夢主の性格描写に好感を持っていただけて嬉しいです!!このシリーズにこれからもお付き合いください(о´∀`о) (2021年8月19日 2時) (レス) id: 8937c41eea (このIDを非表示/違反報告)
伊織 - 不快にさせてしまい、本当にすみませんでした。作品、とても面白かったです!!特に足立君の性格がもう最高で...!こんな人惚れる以外の選択肢ないですよもう...! (2021年8月18日 14時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 伊織さん» 個人の創作物にコメントをする際は、他作の名前を出したり、比較をすることなく、ストレートに「面白かった!」だけを伝えるようにしてもらえるとハッピーな気持ちになります!! よろしくお願いします( i _ i ) (2021年5月16日 23時) (レス) id: 253e5eff26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年6月23日 21時