Polaroid －INI 短編集－ (ページ5)

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umbrella ページ5

日曜の街

せっかくの休みなのに、1人寂しく傘を差して歩いている俺

1人・・・べつに嫌いではなかったんだけどな

いつもは賑やかなのに人通りも疎らで、

地面の水溜まりに打ちつける水しぶきがもう会えない彼女との日々をフラッシュバックさせる

これだから・・・日曜日の今日だけは、晴れていて欲しかったのに

「理人大きいから、濡れちゃうね」

彼女の傘に2人で入ったら、そう小さく笑ってた彼女の顔が

もう1年も経つのに雨の日には必ず思い出す

もしかしてあの時、遠くで鳴ってた雷は・・・俺らの結末を予感していたのかな

そんなことを思いながら、ボーッといつも通っていた歩道を歩く

この街には、彼女との思い出が多すぎるのに

よりによって何でここに来ちゃうんだろうか

目に入ってきた可愛いこのお店は

「ねぇこれ理人みたい(笑)」

「え？これが？(笑)」

「うん・・・可愛いでしょ？」

そんな彼女が可愛くて、お揃いで買ったストラップのお店

「ねぇ！これベランダに置こう？」

「おーこれ置いたら一気にお洒落になるやん」

「うん！珈琲だってここで飲めちゃうし」

「うわ、それめっちゃいいな」

小さな家具屋さんで一緒に選んで買った赤いテーブル

まだ色違いだけがお店に残っていて

「なんか・・・私たちみたいだね。この曲」

「でしょ？俺もね、そう思ってAに聞かせたかったんよ」

耳元で流れる音楽も
俺らみたいって話してたラブソング

久々に着たコートのポッケに手を突っ込めば、彼女に渡せなかった指輪

どれも彼女の匂いがして

俺は、彼女がいない世界で生きていた自分を未だに思い出せない

だから・・・またここに来てるんだよなきっと

あの時君が言った、さよならの言葉の本当の意味を探しに