mutual pining ページ1
彼の家はバス停から家まで5分
いつもは何ともないのに、今日はやけにこの道が長く感じる
空に浮かぶ雨雲も地面にあるはずの水溜りもなくて
何だか昨日の大雨の中で起きた出来事が全て夢だったようで
変な感じ
彼の住むマンションに着くと、
先についていた京介が私を見つけて手を上げる
「ごめんね・・・忙しいのに」
「全然いいよ、今の大夢見てらんないし」
「・・・ごめん」
「何でAが謝るんだよ。悪いのは大夢でしょ」
「ううん、ほんと皆に私・・迷惑かけてる。ごめんね」
「・・・はぁ。そういうとこだよなぁ」
そういうとこ？
「もう押すよ？いい？」
「あっ、うん・・お願いします」
私はカメラから映らないように離れて
京介がインターホンを押す
「はい」
「あ、俺。京介」
「・・・あぁ、京介？今開ける」
大夢の声は、低くて小さかった
「京介、ごめんね。ありがとう」
「うん早く行ってやって」
急いでエントランスを抜けてエレベーターに乗り込む
エレベーターの扉が音を鳴らして開いて、
すぐ左にあるドアのインターホンを押してしばらくすると開いたドア
「・・・なんで、」
私を見て目を見開く
「・・・何で京介じゃなくてAがいるの」
そこには、明らかにいつもと違う大夢が弱々しく立っていた
「・・・大丈夫？薬で治らないんだったら、病院で点滴打・・」
「・・・大丈夫だから。帰って」
溜息をついてそういうと
私を追い払うようにして、中に入っていく大夢にそのまま閉まろうとするドア
「・・・ちょっ！」
危ないここで閉まったら本当に帰らなきゃいけなくなる
彼はもう玄関にはいなくて、奥の寝室のドアを開けて入っていった
いくら具合悪くても、心配で飛んできたのに帰れって・・・。
「帰らないからね、私」
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作者名：華尼拉 | 作成日時：2023年2月17日 1時
