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が、今回ばかりはそれを幸運だとロスティスラーフは思った。
「花火先輩だ？！？！」
思わず出た大声だったが、喧騒にすぐにかき消される。けれど、声の主には無事届いたようだった。ロスティスラーフの視線の先にいた女が、びくりと肩を震わせる。驚いた、とはまた少し違う感情が混ざっていそうだったが、目を丸くして彼のほうを見た。が、すぐに柔らかい笑顔を浮かべて、彼女は返した。
「あら。えっと……」
自信なさげにほほ笑む彼女に、ロスティスラーフは小走りで近づく。
「ロスティスラーフ！ ローシャ！ ……って言っても覚えてなくても仕方ないか！ もうだいぶ経ったもんな。へへ、連合にいたんだよ。おれも」
「ああ、ローシャくん！」
彼女、言ノ葉連合でのかつての同僚であった乙宮花火の笑みに生気が戻った。先ほどの笑みは「柔らかい」ではなく「力ない」と分かるように。
「久しぶりね。……そんなに時間が経っていたかしら？」
「うーん。おれがそう思うだけかも。新しい仕事始めてから、ずっとバタバタしてたから？」
「新しい仕事？」
「うん。……あ、今日はチラシ置いてきちゃった……。郵便屋なんだ。届かない手紙を届ける、郵便屋さん」
小脇に置いているつもりだったカバンに手を伸ばすが、そこに置いてあったのはたい焼きの入った紙袋だった。残念に思いつつ、口頭で説明する。
「届かない手紙を、届ける？」
瞬間、花火の瞳に光が宿った。興味を持ってくれた、と思ったロスティスラーフは、うん、と頷く。
「そうなんだ！ もしかして、花火センパイも何か頼んでくれる？」
ロスティスラーフも目を輝かせながら返した。が、彼女は首を振った。
「ううん、大丈夫よ。ありがとう」
だって、と彼女は、胸の前に持っていた小包を、ぎゅ、と強く抱きしめる。
「私は、ちゃんと自分で届けに行くもの」
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