しろくまのゆうびんやさん【叡智Ⅱ】 (ページ23)

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三人の皿の上に乗ったケーキは、あっという間になくなった。
　幸い、雨は止んで日が差し始めた。この辺で、とロスティスラーフは立ち上がる。

「ごちそうになりました！また友達と来ます！」
「助かります。いっぱい宣伝してくださいね」
　流れで二人は見送りに出た。空は、開店時の大雨が嘘のように、どこまでも青かった。
「あ、虹が出てる」
　ほら、とロスティスラーフが指をさすものだったので、二人の視線はその先へ誘導された。ぼんやりと、けれど確かに細い虹が空を横断していた。
「お客さん、今日はラッキー続きっすね。残り物には福がある……って言いますし、次からそうやって売り出そうかな、割引品」
　そう言う雪に、ものは言いようだな、とトーマンは苦笑いした。

「ありがとうございましたー！」
「ありがとうございました。またのご来店を」
　ケーキも、虹ももたらされたところに好意はない。だから、受け取るのをついためらう気分になりそうにもなる。なぜなら、返し方が分からないから。
　でも、そんな小さな幸運、ぺろっと食べてしまえばいい。そして、食べた分だけまた他の誰かに「善意」を放り投げてやればいい。それくらい、社会というのは簡単な仕組みかもしれない。
「……ラッキーがてらトーマンサン。食器洗いやりません？」
「それはアンラッキーじゃないのか？」
　これは、善意ではなく「好意」だけれど。