やさしい世界で君は、【携帯獣×海賊】 (ページ5)

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きっかけページ5

キッサキの朝は寒い。とんでもなく寒い。

冷涼なシンオウ地方の最北端は伊達ではなく、冬場になれば日中でも零度を切る極寒の地だ。

ナギサですら冬は氷点下になるというのに、何故キッサキなんぞに足を運んだか。それはファイトエリアからの船がここしか着かないからだ。

何故か着いてきたアフロと共に久々に回ったファイトエリアはトレーナーのレベルも段違いに高く、実に有意義な時間を過ごせた。

ジムのやつからの電話さえ来なければ、は二週間も居るつもりだったのに。

「いや二週間もジム閉めちゃダメだろ」

「うるせぇアフロ。滅多に人来ねぇんだから開けてようが閉めてようが変わんないだろ」

オーバの小言を聞き流しながら、ザクザクと雪を踏み潰して森の中を進む。

大体朝からこんな寒いところにいるのも、こいつが「せっかくだしエイチ湖寄ろうぜ」なんて言い出すからライチュウが乗り気になってしまったのだ。

そのライチュウはオーバのブースターと一緒に新雪の上を転がっている。

針葉樹林の隙間から覗く雲ひとつない青いの空は、痺れるぐらい冷たい。真っ白な雪原で反射した光が目に刺さって痛かった。

「だってよー。これからの季節キッサキなんて滅多に来れないぜ。明日から吹雪くらしいし」

「まじか。さっさと帰りてぇ……さみぃ……」

俺もオーバも飛行要員(フワライドは別として)を持っていないので、キッサキに来るにはテンガン山を越えなければならない。

しかし、冬になると猛吹雪の影響で一気に難しくなる。余程雪慣れしてないと死ぬというのにわざわざ行く馬鹿はいない。

だから、今日中には山を越えたいと言うのに、このアフロは呑気に雪玉を作っている。
つーかお前なんで半袖なんだよ。マフラーしか装備してないってお前人じゃねーだろ。

見るからに寒そうなオーバの格好に、ぞっと寒気が背中を下った。ムカついたのでオーバの太ももを蹴り上げる。

「ってーな！！何すんだデンジ！」

「黙れ人外。寒さを知ろ」

「んだよ今日そんなに寒くない……って、おいデンジ」

バンバンと手加減なく背中を叩かれた。ジロリとオーバを睨むが「あれ見てみろ」と指さされた方向に仕方なく顔を向けた。

「ライチュウとブースターが走ってるな」

「いやそこじゃなくて、ライチュウ達が向かってる所、なんか変じゃね？」

2体とも不自然なほど全速力で雪を蹴っている。

「……急ぐか」

雪に足をとられないように２体に着いていく。