28章 染み付いた自己犠牲 ページ29
後ろでは既にダンデさんが連絡を入れていた。拘束の為、何か縛るもの持ってませんか?とキバナさんの方を振り向いた瞬間。
数秒ほどの気の緩みだった。私が視線を逸らしたのをチャンスだと言わんばかりに、彼女が動く。逃げるかと思いきや…ポケットから何かを取り出す仕草だ。
「キバナ!!!私と死んで!!!!!」
「え…?」
彼女の手元が、ギラリと光る。正体は小型のナイフ。咄嗟の出来事に誰もが動けずにいた。走り出した女性は、キバナさんの腹めがけ突進してくる
ズブリ、と鈍い音が脳内で響いた。
『うっ……だから…!やめろって…!!』
「!?」
「A…!?」
刺されたのはキバナさんじゃない。私である。無理心中を図ったのかと瞬時に彼を背に隠し、言わばみがわりの形で前へ出た。
ナイフの弾き方を間違えれば、キバナさんやダンデさんに当たる可能性もあるかな…と考えたから。多少の犠牲もあるが、刺されるのは慣れっこである。問題は刺した方のメンタルは平気かということ
「あ…!あっ……!」
声にならない悲鳴を上げ、刺したショックからかその場に倒れてしまった。青ざめたまま気を失っている。ナイフの持ち方も完全に素人だったし……初めて人を刺しましたと言わんばかりの動きだったが一つ物申す。
おいこら!!!先に手ぇだしといて…!!
「Aくん!?しっかりしろ!!!すぐに病院へ…!!」
「お、お前…!!オレを庇って…!!」
『大丈夫です。大丈夫ですから…落ち着いてください』
「大丈夫な訳ないだろう!!!!刺されたんだぞ!?」
あぁ、久しぶりに痛い。いつぶりかの感覚に妙に懐かしさすら覚える。……まずいな、考え方が完全にサイコパスだ。
取り敢えず腹に刺さりっぱなしのナイフを引っこ抜き、止血しようと壁にもたれ掛かる。その間も2人は大慌てだったが……
「ナイフを引き抜くな!!血が溢れかえるぞ!!!」
『や、あの……ハァ………』
「オレさまのフライゴンで病院まで運ぶ!悪ぃが少し我慢しろよ!!」
『すいません…!ハァ………ほんとに黙ってて』
両隣が騒がしいな。当の本人が一番落ち着いてるってどういう状況なんだこれは。
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ノルン(プロフ) - めっちゃ続きが気になる… (2022年10月22日 22時) (レス) @page32 id: 01548bf821 (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - 面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 夢主ルカリオ連れてそう…(いろいろ手伝ってくれそうだしカッコいいし…) (2020年6月25日 10時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チョコ&ピーナッツ | 作成日時:2020年6月16日 15時