太宰幹部、好きです ２【文スト】

ありがとう ページ21

Aside





｢まま！ゆうり、ぱぱ見つけた！｣







佑里はそう言いながらぴょんぴょんとはね、右手で砂色の外套を握っている




私は硬直して、言葉が上手く出なかった





隣にいる芥川君も、同じような状態になっている









｢…久しぶり、Aちゃん｣



『…お、さむ、さん…？』







ニコリと笑う彼に、4年前の面影はない




完全に変わっていた。人を救う側の笑い方、瞳







｢佑里に全てを教えて貰ってね。…遅くなったけど、迎えに来たよ｣



『迎えにって、…私は！ずっとマフィアで…！』



｢違うよ。佑里がいるから｣








ギュッ




温もりと、ふわっと香る治さんの匂い。それは変わっていなかった




突然のことに上を向くと、唇に暖かいものが当たった




彼の、唇






触れるだけの接吻だったけど、私の涙腺を崩壊させるにはそれだけで十分だった








『な、んで、…！なにを、知ってるんですか…！！うっ、ぁあ……』




｢…佑里は、異能力を持っている。私と同じ、【人間失格】を｣


『…へ？』






ずずっと、鼻水をすする




佑里が？私が知らないのに、そんなこと、







｢本人が教えてくれたんだ。まぁ、話したら長くなるから今は言わないけどね｣



｢いのうりょくー？なぁにそれ｣


｢ふふ、そのうち知ることになるよ、佑里｣






佑里に笑いかける彼の姿は、父親そのもの




4年前なら、こんな姿見せないはず。本当に、変わったな





そんなことを考えていると、さらに涙が溢れてきた






｢…A、君は掟を破れる｣



『…っ、』






不意に呼ばれた私の名前



呼び捨てなんて、初めてだ







｢3人で、一緒に生きたい｣







私の涙を拭い、再び唇に接吻を落とす





私は思わず治さんの背中に腕を回し、彼の胸の中でわんわんと情けなく泣き出してしまった







その光景を、じっと見つめている芥川君と樋口ちゃん









｢…っ、A様、まさか貴方、マフィアを｣



｢樋口、それ以上発言するのは僕が許さぬ｣



｢っ！？しかし先輩！｣





｢Aは僕の唯一無二の友人…マフィアを抜けようが抜けまいがそれは変わらぬ｣




『！』








あく、たがわ、くん








｢…帰るぞ樋口｣


｢！ぼ、首領には…｣



｢失踪したと言っておけばいいだろう｣








芥川君と樋口ちゃんは言い争いながら去っていく





治さんはずっとその姿を眺めていた

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