すいーと どろっぷ.3

＊ ページ13

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｢師長さん！｣

｢世良先生、あ、204号室のカルテでしょ？｣


はい。っと手渡された本来の目的。
残念ながら今はそれじゃない。


｢あの！さっき、ここにいた男性！
誰なんですか！？｣

｢あぁ、櫻井さんのことかしら？｣

｢はい、あの人は一体…｣

｢あぁやって、時々病院に来るのよ。
忘れ物をわざわざ持って来たり
衣類なんか、持ってくることもあるわね｣


ほんと、献身的よね。
愛ってすごいわねぇ。
一緒に住んでるんですって。
まぁ、ほとんど家には帰らないけどね。


渡海先生。


そう。
征司郎と言われて。
初めは誰のことかわからなかった。
が。
間違いなく、僕の担当医は
渡海征司郎だ。

渡海先生を下の名前で呼ぶほど
親しい人がいたなんて。




．




｢邪魔。｣




．




｢渡海先生！｣

｢研修医様の手を煩わせる前に終わらせて起きましたんで。｣


僕の手の中のカルテを見ながら
そう言い捨てた。
噂をすればとはまさにこの事である。


｢渡海先生、櫻井さんから
これ、預かりものです。｣

｢あぁ。翔さん来たんだ。｣


紙袋を師長さんから受け取った渡海先生。
その紙袋から
小さな紙を取り出して。

ふわり。と、笑った。
本当に一瞬だけ。




昼間の病院の廊下は
大きな窓から陽の光がサラサラと差し込み
小さな猫背の背中を
柔らかく包んでいた。




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