すいーと どろっぷ.3

＊ ページ12

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｢あの人、人のこと好きになったことあんのかな…｣



いや、絶対にあるわけない。
人の命を金で救う悪魔が。
もし、仮にあったとして
あの、悪魔が好きになる人は
一体、どんな人なんだろうか。

……。

余計なことを考えている場合でもない。
これから行う患者さんの問診のために
ナースステーションまで
カルテを取りに行かなければならないのだ。

早足でナースステーションまで向かうと
先約がいた。
誰かのお見舞いだろうか。
それにしては師長さんと親しげに会話をしているようだ。


｢では、僕はこれで。｣

｢あら、もう、帰っちゃうの？｣

｢はい。届け物をしに来ただけなので。
申し訳ありませんが、よろしくお願いします。｣


ニコリと笑ったその男性は
男の僕でもドキッとしてしまうほどだった。


｢こんにちは。｣

｢あ、こんにちは。
いつもお世話になってます。
世良先生。
これからも征司郎をよろしくお願いいたしますね｣

｢え…？｣

｢それでは、失礼します。｣


そう言って、
男性は足早に去っていった。

征司郎。

征司郎…、

僕は慌てて後ろを振り返ったが
もう、男性の姿はなかった。




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