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「翔さんは、お見合いを、するんですか」
「……どうしようかなって、悩んでる」
そう言いながら、俺に答えを求める視線
……やめてほしい
俺は、どうすればいいかと訊かれたら
もっともらしい理由を交えながら言ってしまう
そしたらあなたは、疑いもなくそうするだろう
「翔さん？」
ふいに彼が泣いていることに気づいて
思わずそばに行って、どうされましたかと尋ねた
「ほんとは、怖いんだ」
「怖い？」
「両親の事は何一つ覚えてないけど、
妹を引き取るって言った人たちのことは今でも覚えてる。
うちは一人が限界だ、翔くんには申し訳ないけど
マイちゃんだけ養女にするって、言われた。
何度もごめんなさいねって叔母さんは言ってたし
叔父さんも何度も謝ってくれた」
震えるその肩を、今なら抱き寄せても許されるだろうか
ただ純粋に愛おしいと想う
この人の側にいたい、と願う
「だけど俺、聞いちゃったんだ」
翔さんの叔父さんは、『翔くんはまあ、引き取れないわけじゃない』と
叔母さんは、『男の子は欲しくない』と、そう言ったのだという
他の親戚はそれを止めてはくれたけれど
だからといってその人たちが引きとってくれるわけでもなく
施設に入れられたあと、様子を見に来てくれる人もいなかった
初めて聞く、話だった
翔さんが親戚に酷い仕打ちを受けたことは薄々感づいていたけれど
本人の口からそれを聞くのは、今日が初めてだ
本当は、聞きたくなかった
聞いたらきっと
脇役でいいと、思えなくなってしまうとわかっていた
そしてその予感は、的中している
「翔さんは、結婚したいと想う相手はいないんですか？」
なるべく平静を保った声で言ったつもりだけど
もしかしたら震えた声かもしれない
もしかしたら縋るような声かもしれない
そんなことさえわからないほど
動揺している自分がいて
動揺していることに、驚いた
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作者名：storm quintet x他4人 | 作者ホームページ：.
作成日時：2014年10月29日 23時
