瞳にPlunderer ●3●《ars/s.o/1126》 (ページ45)

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すると、彼女は口元に笑みを湛えたまま言った。

「ところで貴女は、智の恋人？」

「え？」

唐突な問いかけに私は言葉に詰まる。

「貴女のような素敵な子があの子の傍にいてくれるなんて、嬉しいわ。私たち夫婦は至らないところも多くて智を傷つけていたようだけど……貴女はあの子のことがよくわかっているみたいだから。どうか、智をよろしくね」

彼女は本当にうれしそうに笑っていた。

違う、そう否定するための声が喉まで来ているのに、なかなかその先へ出てこない。

喉の奥で渦巻いて、引っかかってしまったまま。

「お待たせ、Aさん。潤が車用意してるから帰ろうか」

私が何かを言う前に翔くんが部屋に戻って来てしまった。

結局、違うと、否定することができなかった。

帰りの車に揺られながら考えるのは社長のこと。

そして自分のこと。

社長と恋人だと間違われることに、嬉しくなってしまう自分がいた。

もう、誤魔化せないかな……。

どこか観念した気持ちで私は考える。

今の私の瞳には、たぶん社長しか映っていない。

ごめんなさい和也さん、貴方を嫌いになったわけではないのに。

瞳に映していなかった間、私はきっと社長を見つめ過ぎた。

後ろへ流れていく街並みは夜の中に沈んでいる。

社長は一人でどんな夕飯を食べたのかと、そんなことが気になっていた。

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