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確実に勘違いされてるけどそれを訂正する隙は無い。
翔くんの顔を見ればニコニコした嬉しそうな顔とぶつかるだけだった。
「間違ってないでしょ。ほら行こう」
「もう、翔くん」
口では文句を言ってるけど、自分の口角が上がっていることは分かっている。
これじゃあ訂正したって説得力なんかないよね。
案内された応接間で真島さんから頂いたお茶を飲んで待つこと約十分。
廊下を歩く足音が聞こえてきて私は顔を上げた。
扉が開かれてその向こうから上品な出で立ちの女性が現れる。
驚いたことに和装だった。
私と翔くんは同時に椅子から立ち上がる。
「お母様、久しぶり」
「久しぶりね翔。急にどうしたの」
凛とした声で話し出した女性はけれどずいぶん柔らかい表情で翔くんに問いかけた。
翔くんに向けるまなざしは社長とも似ている気がする。
「聞きたいことがあってきたんだ。あ、彼女は吉野Aさん」
「はじめまして」
翔くんに促されて私は彼女に挨拶をする。
翔くんのお母様は私を上から下まで眺めると、ふっと口元を和らげた。
「はじめまして。智と翔の母です。どうぞ緊張しないでください。お会いできてうれしいですよ、OHNOのデザイナーさん」
「……ご存じで」
「ええ。翔から話は聞いています」
私は翔くんに視線を向けた。
翔くんはきゅっと口角を上げただけで私の視線には答えない。
「じゃあ座って話そうよ。ね、Aさん」
もう、どんなふうに紹介したんだろう。
と、今聞くことはできないから促されるまま椅子に座りなおす。
「それで、わざわざ急に帰ってきてまで何のお話ですか」
お母様の問いかけに私と翔くんは顔を見合わせる。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年3月29日 22時
