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もし今も、社長が認められてないなんて思っているんだとしたら、それはすごく悲しくて、寂しくて、悔しい。
私が惹かれたOHNOのデザインは、紛れもなく社長が生み出したものだ。
好きなものを否定されたら誰だって文句の一つくらい言いたくなる。
たぶん、これはそう言う類の感情だ。
「こんなに社長らしいデザインなのに、出来損ないだなんて思えません。誰がなんて言ってたって、たとえ社長のお母様がそう言っていたって、私は社長が素晴らしいデザイナーだって知ってます」
怒っているのかな、私は。
そうなのかもしれない。
私の尊敬する社長を貶すのは、たとえ社長本人だとしても許さない。
社長は出来損ないなんかじゃない。
もし誰かがそうだというのなら、そんなのは間違ってる。
「そんなのは、間違ってるんです……！」
社長があっけにとられたような顔をした。
見開いた目が、段々と険しさをもって細められる。
逸れた視線は社長が自分を認めていないことを明確に示していた。
「いいんだよ、フォローしてくれなくて。俺はもうあの家とは関係ないんだ」
無機質な声は揺れることはない。
まるでワザと、揺れることなんてないようにしようとしているみたいに。
私はぐっと手を握りしめた。
だって社長が、関係ないなんて顔してないから。
「それならなんで翔くんを連れて家を出たんですか」
「っ」
社長がわずかに息を飲んだ。
図星なんだと私は思う。
翔くんが和也さんに会っていなかったこと、勝手に出て行ってごめんねと和也さんに謝っていたこと、翔くんが社長の傍にいることを選んでいること。
それが答え。
社長に無理やり婚約者にされたころの私にはわからなかったかもしれなくても、今の私にはわかる。
社長が取った行動、それを想像できるくらい今の私は社長を知った。
「翔くんを連れて家を出たんですよね」
「……そうだ」
「関係ないならなんで、そんなことしたんですか。関係ないならなんで、私を婚約者だなんて言ったんですか」
「それは……」
「和也さんに嫌がらせをしたかったから、でしょう？関係ないなら、和也さんのものを奪う必要なんてないじゃないですか……！」
社長は勝手な人だ。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年3月29日 22時
