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和也さんが仕事を断ったこと、その際にOHNOを推薦したこと。
つまりは、和也さんが社長に仕事を譲ったということを。
「……そんなことが」
私は自分でもびっくりするほど低い声で呟いていた。
気分が重たくて言葉が自然と沈み込んでしまう。
「それで智くんが問い詰めるって言って、今回の主催もとに連絡したんだけど……」
翔くんは苦い顔をしてまた言いにくそうに黙り込んでしまった。
何度か唇を震わせたあと、意を決して言葉を吐き出す。
「『SAKIEの二宮社長がOHNOの方が向いているからそちらでお願いしたいと辞退されたのは本当です。我々としてもぜひSAKIEでと申したのですが、デザインを選ぶならOHNOだと言われまして。そこで我々も改めてOHNOのデザインを見て、お願いすることにいたしました次第です』……って言われたんだって」
「！そんな……」
まんま、こう言われたんだってさ。
と翔くんは付け足した。
私は驚いて小さな声を上げただけで、それ以上言葉が続かなかった。
心が痛むのに合わせて眉間に皺が寄るのが自分でもわかった。
それじゃあ、社長があんな風になるわけだ。
せっかくの機会、二人の距離を縮められたらと思っていたけど、かえって逆効果になってしまったようだ。
和也さんはどうしてそんなことを言ったんだろう。
言われた社長がどう思うかくらいは想像できそうなものなのに。
私と翔くんは同時に押し黙った。
ずっと黙って聞いていた松本くんがふいに立ち上がる。
「俺、お茶淹れなおしてきますよ」
言うや否や三人分のマグカップを持ってキッチンへ行ってしまう。
気を遣わせてしまっただろうか。
翔くんと二人になるとキッチンの方からお湯を沸かす電気ケトルの音が聞こえてくる。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年3月29日 22時
