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ホテルのエントランスで待っていた私の元に翔くんが現れたのはそれから一時間半ほどした頃だった。
だぼっとしたパーカーのポケットに両手を突っ込んでいた翔くんが自動ドアをくぐってエントランスに入ってくると近くにいた女性客が翔くんの顔を二度見して何やらひそひそと話を始めたのが目に映る。
うん、翔くん目立つからね、顔が。
「Aさーん！」
翔くんは自分が注目を集めていることに気付いていないのかきょろきょろした後私を見つけると、パッと笑みを浮かべて私に手を振った。
周りの女性客の目が一斉に私に向いた気がして私は恥ずかしいような居心地悪いような気持ちで翔くんに駆け寄った。
「翔くん、ごめんね来てもらっちゃって」
「いいのいいの、運転してるの潤だし。Aさんに会えるならおれどこにでも行くよ」
キラキラした笑顔で笑った翔くん。
どこまで本気かわからない言葉だけど翔くんにそう言われるとなんだか微笑ましくなってしまう。
自然と頬が緩んだら、翔くんのちょっと真剣な目が私の顔をのぞき込んだ。
「よかった、Aさん笑顔だ」
「え？」
「声に元気なかったから心配してた。さあ、行こう。話はうちで聞くからさ」
ニコッと笑った翔くんは私の手から荷物を持ち上げた。
くるりと踵を返して外へ歩き出す。
「あの、荷物は自分で、」
「いーの、おれが持ちたいの！」
荷物を担ぎ上げた翔くんが代わりにとでも言うように私の手に自分の手を滑り込ませた。
きゅっと握りこまれて驚いていたらぐいっと引っ張られる。
「ほらAさん」
「ちょ、翔くん手！」
翔くんに引っ張られるままホテルを得るとロータリーに見慣れない車が止まっていた。
私は車に詳しくないからよくわからないけど、エンブレムは社長が乗っている車と同じものだから同じブランドの車のようだ。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年3月29日 22時
