File51 麻生圭二なる者 ページ7
「フン……。あれがのんびり出来る島に見えるかよ?」
ボウヤと蘭ちゃんはすっかり観光気分みたいね。私も人の事言えないけど。
「月影島……『死神』の二人を歓迎しているのかしらね」
「うっせーな」
「あら、自覚してるの? 私別に誰だとは言ってないけど」
「な! 嵌めたなー!?」
「嵌った方が悪いのよ」
島に到着し、私とボウヤと蘭ちゃんと毛利探偵一行は『麻生圭二』の居場所を知るために村役場に行く事にした。大きい島では無いし、人口は多くは無い。役場なら全住民の事を把握してるでしょ。
村役場は小さな島に合っている程小さい。小ぢんまりした二階建ての建物。中は穏やかで、米花町がどれだけ事件に満ち溢れているか思い知らされた。ったく、『死神』なんているからよ。
「『麻生圭二』? いませんねー、この島にそんな人は……」
「ええっ?」
『麻生圭二』という名前の人物はこの島にいない。という事は死んだか、もしくは偽名か。
「もっと良く調べて下さいよ! 現に私は、彼からこーやって手紙を貰ってるんですから」
「しかし、この島の住民名簿には載っていませんし……。それに私、先月この島に来たばかりであまり詳しくは……」
その時、奥の扉から出て来たメガネのお爺さんがこちらに気付いた。毛利探偵と職員の人の元へ近付いて来て、「おい、どーした?」と言った。
「いえね、この方が島の住民から依頼を受けて来たと仰ってるんですけど……」
「依頼?」
「はい、『麻生圭二』さんって方から……」
そう言った途端、メガネのお爺さんの瞳が思いっ切り見開かれた。『麻生圭二』に見覚えがあるって事かしら……それとも……。
「あ、『麻生圭二』だとぉ〜!?」
そう大きく出した途端、それまで穏やかにだったこの建物にいた人達が一斉に恐怖に怯えた顔をした。
「ボウヤ、これって……」
「あぁ……。『麻生圭二』さんは……」
『工藤新一』が出かかってるわよボウヤ……。蘭ちゃんにバレるわよ、ったく。気を付けなさいよね。
「え?」
「そ、そんな筈は無い……。だって彼は十年前に、死んでいるんですから……」
「ええっ!?」
ビンゴ! やっぱりね。『麻生圭二』は死んでいる。という事は、他の誰かが毛利探偵に依頼を出した。それは『麻生圭二』と親しい間柄という事を示しているわね。『麻生圭二』で依頼しなければならないという事は、自分の本名を隠す必要があった……一体、なんのために……。
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作者名:櫻咲翼遥 | 作成日時:2016年12月18日 15時