File65 現れた譜面 ページ21
「言ったじゃない、川島さんの背中に泥や砂が付いてるし、床には引きずった跡が残ってるって……」
「普通大人なら、運びやすくするために上半身と下半身を持って運ぶわよね?」
「た、確かに引きずるのは考えにくいな……」
「女を運ぶなら、こうする事も出来るしね。まぁ、犯人は男だけど」
蘭ちゃんを手招きし、立たせた蘭ちゃんの背中と足に手を回してお姫様抱っこした。
「お、おい琳佳さん!?」
「え!? 琳佳さん、下ろしてください!」
「あら、こうされるのは工藤君以外嫌?」
「そ、そういう意味じゃありません!」
「そう?」
顔を真っ赤にしてバタバタ暴れる蘭ちゃんを床に下ろし、ボウヤを見やる。するとボウヤは私の方を憎々しげに睨んだ。怖いわねぇ。
「でも、どーして犯人は死体をこの部屋に運んだんだろ? わざわざ危険を冒してまで……」
「フン! この殺人を呪いのせいにしたかったんだよ……。あのピアノのせいにな……」
「ピアノの呪いが人を殺すなんてバカげすぎてるわね。この島の島民にはそんな非現実的な呪いなんてものを信じる人がいるのね」
呪いなんて有り得るはず無いじゃない。楽器には霊的なものが移りやすいとはいえ、殺人事件なんて起こらないわよ。
「ところでこのピアノ、いつからここに?」
「あ、はい十五年前に麻生さんがこの公民館に寄贈されてからずっとこの部屋に……」
「あ、あの麻生さんですか?」
「はい……名前もちゃんと鍵盤のフタの所に……」
「ん?」
ピアノの鍵盤を開けた途端、声を上げた毛利探偵に近付き、鍵盤を見た。
「譜面……」
「!?」
「変ね……昼間見た時はこんな物無かったのに……」
「う、わあぁぁぁ!」
誰? あの男……。さっきまでないかったわよね。
「え? 誰ですかありゃー?」
「西本さんですよ……。 なんでも昔は羽振りが良くて、酒と女と賭博に大枚をはたいていたらしいんですが……。二年前に前村長亀山さんが死んで以来、何かに怯えて、あまり外出されなくなって……」
何かに怯えて……。という事は『亀山勇』に何かあったという事……。調べる必要がありそうね。
「ほう……二年前の事件から……」
「確か、村長は彼と幼なじみでしたよね?」
「あ……ああ……そ、そうだったかな……」
顎に手を当てた子供らしからぬ仕草をしたボウヤが「ねぇ、琳佳さん」と話し掛けてきた。
「何かしら?」
「黒岩さん……なんか怪しくない?」
「やっぱり……?」
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作者名:櫻咲翼遥 | 作成日時:2016年12月18日 15時