第6話 死んだはずの大犬座 ページ7
本館を回り、別館、病院館、資料館などを回って、その所々での過ごし方やオススメなどを教えてくれたカオルさん。どうやらカオルさんはサイドスペースで過ごす事が好きらしい。私もあそこは気に入ったし、今度使わせてもらおう。静かな雰囲気は好きだし。
TVMビルの中は思ったより過ごしやすい。あらゆる用途に使う物が揃っていて、すごく便利。任務、捜査外ではそういう場所でのんびり過ごしてて良いみたいだしね。
二人で歩いて別館の国際的闇組織捜査班ルームに戻って来た。誰かと隣を笑顔で歩くなんて、ここ数年は無かった。
「カオルさん、どうもありがとうございました。そろそろルームに戻った方が……」
「そうね! もう一人のメンバーも帰って来てると思うし」
「もう一人のメンバーですか?」
「実はもう一人メンバーがいるんだよ。彼は君の事を知っていると言っていたが……」
国際的闇組織捜査班ルームのドアの前でカオルさんと話していると、リーダーがやって来た。
「私を知っている人……ですか?」
「ああ。かなり仲が良かったと言っていたよ」
私を知っていて、仲が良い人……シリウスやアリアはもう死んだし、メランジュも亡くなった。それ以外なら闇組織の構成員……いや、そんな人がTVMにいるわけ無い。もしいるんだったら、私を送り込むなんて事しないはず。
「青星君、少し来てくれ!」
“青星”……なんてそんな名前の人は聞いた事無い。そんな人知り合いにいない。なのに私を知っている……? どう考えてもおかしい。
確かファンタジスタから見せられたTVM国際的闇組織捜査班の捜査官調査員リストにも、“青星”なんて人はいなかった。
『風見陽茉』、『如月魁理』、『香坂薫』、『桧山海祐』『ジェイ・プルート』……とリストに載っていた捜査官はこの五人だった。『風見陽茉』さんはいないけど、きっと何か理由があると思う。
その『風見陽茉』さんでは無いとして、“青星”さんはいなかった。ファンタジスタや他の人達からもそんな名前を耳にした事は無い。
私があらゆる考えを頭に巡らせていると、ドアがガチャンと音をたてて開く……とうとう姿を現した。
刹那──私は目を見開いた。そこにはかつての仲間であり、私が殺した人でもあり、かつ死んだ人がいた。彼は前と変わらない優しげな笑顔で、私の方を向いていた。
「久しぶりだね、ルナちゃん」
【死んだはずの大犬座】
(見殺しという言葉だけが)
(脳内に染み付いている)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:櫻咲翼遥 | 作成日時:2016年12月25日 18時