第11話 生きた証 ページ12
「神咲はお前の事を嫌ってなんか無い。だから今は、神咲の事をお前が信じるべきだ」
「起きたら、謝らないといけないね」
なんでこんな些細な事で悩んでたんだろう……少し前の僕がアホらしくなる。僕がルナちゃんを信じていなかっただけなんだ。
薄らと涙の跡の残ったルナちゃん。その哀しげな横顔を見て、なぜだか愛しく思った。
TVMに来た理由は敢えて聞かない。彼女自身もやりたく無いと思っているはずだから。いつか真の意味で、彼女と仲間になって分かり合えたら良いと、素直にそう思えた。少し前の悩みは風に乗って消えていた。
「飲み物を買って来る。カオル、カイユ行くぞ」
「はいはい」
「んじゃな!」
「うん……ありがとう……」
如月君はこういった時にさり気なく気を使ってくれる。やっぱり彼は大人だ。僕なんかよりずっと。早く目覚めると良いのにな。
「あれ……ここ……」
「おはよう、ルナちゃん」
「ロ、ロウ君……」
若干恐怖の表情を見せるルナちゃん。その恐怖を取り払うように笑顔で接した。その甲斐があって、ルナちゃんも笑顔になった。
【〜神咲月奏 Side〜】
目が覚めると、そこはサイドスペースでは無く国際的闇組織捜査班ルームだった。さっきまでいたはずの如月さんはいなく、カオルさんやカイユさんもいない。リーダーは確か会議だったはず。
「あれ……ここ……」
「おはよう、ルナちゃん」
「ロ、ロウ君……」
さっきの恐怖が蘇る。ロウ君の姿が彼に重なって……。冷や汗が首を伝うのが分かった。でも目の前で笑うロウ君に、つられて私も笑顔になった。
「さっきは急に、ごめんなさい。傷付きましたよね……」
「ううん、そんな事無いよ。僕の方こそ、ごめんね」
「……うん。あの……」
「ルナちゃん? 何?」
「生きててくれて、ありがとう。それから、あの時も……ごめんなさい」
謝り切れなくて、顔を下げた。ロウ君と顔向け出来ないよ……。殺してしまったんだよ? 最低……大切な人なのに……。
「ルナちゃん、顔上げて?」
「え…………」
「僕はここにいる。君は僕を殺してなんか無い。僕は君に殺されてなんか無いよ」
「ロウ君……! あり、がと……」
それしか口に出せ無かった。その一言に色んな想いを込めて。みんなに綺麗と言われた、この……。
「生きててくれて、本当にありがとう!」
笑顔だけで。伝えるだけで良い。きっとロウ君には、伝わるから。
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作者名:櫻咲翼遥 | 作成日時:2016年12月25日 18時