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黒猫ヨルの冒険6 ページ48

此方を一瞥してから建物の中に入っていった人間達を毛繕いをしながら見送った。


さて、そろそろ俺も寝床に帰るとするか……。


そう思ってふと顔を道路へと向ける。
車やら人やらが沢山行き来する中、1人の男に目が止まった。


あれはさっきの人間……


ふと疑問を感じた。
あの男は裏庭にいたにもかかわらず、この建物の中を出入りしている様子はなかった。否、建物の中で姿すら見かけなかった。


何処か嫌な予感がして思わず男を追いかける。


人の足をすり抜け、車に轢かれそうなギリギリを走りながら、辿り着いた一軒の古めかしい家。
その家の引き戸を開け、男は躊躇うことなくその中へと入って行く。



屋根に登り、様子を窺っていた俺は二階の窓が開きっぱなしのことに気がついた。
中から光が漏れている。
音を立てないように、そっとベランダへと飛び移り、中を覗き見る。


机の上に散りばめられた、男達の写真。
それは先程俺があの煉瓦造りの建物で出会った者達の姿だった。



予期せぬことに、思わず体が揺れる。
その反動で窓に体が当たってしまい、微かだが音を立ててしまった。



不味い……。



男達の視線から避けるように体を部屋の中へと滑り込ませ、近くにあった机の影へと身を潜める。


危ない。
あと少しでも行動が遅ければ、今頃窓の外を覗き込む男に姿を発見されていたかもしれない。


バクバクと弾む心臓を落ち着けようとするが、俺の心臓に追い討ちをかけるかのようにドアのノックが部屋に鳴り響き、また1つ、心臓が大きく跳ねた。



「…俺だ」



リズムのいいノックの後、低い声と共に、先程追いかけてきた男が部屋の中へと入ってきた。
何故か先程より幾分か表情が嬉しそうだ。



「上手くいきそうだぞ」



部屋の真ん中まで来た男は机の上にペンキ缶を置く。
すでにもう1つ、同じものが机の上に乗っていた。


恐る恐る、バレない範囲で俺も首を伸ばしその様子を見る。


すると驚くことに、ペンキ缶の中には本来入っているべきの液体は入っておらず、何か簡素な機械とそこから伸びる黒い線に繋がった三本の太い棒が入っていた。



俗に言う、"爆弾"というやつだ。




「これで、D機関は終わりだ。」




その男の声と言葉で、俺の瞳孔は勢いよく閉じたのだった。

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神永ビスコ(プロフ) - 凩奏詠さん» コメントを見るのが遅くなってしまいました……。ご指摘ありがとうございます!! (2016年11月15日 18時) (レス) id: f153aeb754 (このIDを非表示/違反報告)
凩奏詠(プロフ) - (偽の苗字)が変換されずそのままになってますよ (2016年9月10日 22時) (レス) id: e22f7985b6 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 今晩は。まずは、ここまでの話、お疲れ様です。次回からの話も楽しみです! 御園は確かに!!弟に欲しいですね♪もれなく脱ぎ癖のあるリリィが付いてきそうですが>w<  (2016年8月29日 21時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
神永ビスコ(プロフ) - 玉露さん» コメント、ありがとうございます!なんと!趣味の合うお方が!サーヴァンプ、クロのあの気怠げな感じいいですよね〜。自分は御園を弟にしたいです…っ!(切実)お母様最強説は痛感しております……(苦笑)ありがとうございます! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 298cdf8811 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 91Daysも、サーヴァンプも両方知ってます♪アヴィリオ良いですねぇ。サーヴァンプはクロ、飼いたいと思ってみたり。更新の方は、無理なく。お母上様はある意味最強ですからw (2016年8月18日 22時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神永ビスコ | 作成日時:2016年7月26日 10時

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