黒猫ヨルの冒険2 ページ44
何度も枝や葉にぶつかりながら落ちたのは男の上だった。
黒い帽子を目深にかぶり、ペンキの缶を持っていたその男は俺を抱きとめることもせず、なんともまあ雑に手で払いのけた。
近頃の人間は猫に敬意さえ払えないのか。
腹いせに手に傷をつけてやり、男の頭を土台に窓枠へと上手く飛び乗った。
飛び乗ったのはいいが、手からなんだか嫌な臭いがする。
大方、男の持っていたペンキの缶のせいだろう。
その匂いに顔をしかめつつ、音のする方へと近づいた。
その部屋では数名の男が目に布を巻き、何やら重そうな金属でできた物体をいじっていた。
ガチャリと重そうな音を立ててそれを机に置く。
銃だ。
狩猟用のそれではなく、上着などに隠し持つことのできる大きさのもの。
それを、目隠しをしながら青年たちは分解し、組み立てていたのである。
暫くその光景に見惚れていたところ、真横で杖をつく音がした。
つかれた杖と自分との距離があまりにも近かったことや気配が全くしなかったことに驚き、思わず毛が逆立つ。
「外していいぞ。」
低音の、しかしよく響く声を合図に青年達は皆揃って目の布を外し始める。
その中の1人の青年が俺の存在に気がついたのかじっとこちらを見つめた。
「あれ…。黒猫は魔王じゃなくて魔女の使い魔でしたよね」
飄々とした彼の態度に、横にいた男が眉間に皺を寄せ、睨みつけた。
その視線から逃れるようにその青年は窓の外へと目をやり、頭で手を組みながら口笛を吹く。
なんともまあわかりやすい逃げ方だ。
「誰が入れた」
「追い出しましょう」
先程の青年の後ろに座っていた青年がガタリと立ち上がり俺の元へと向かってくる。
どうやら俺はこいつとは気が合わなさそうだ。
何と無くそんなことを察し、俺はそいつが近寄る前に廊下を駆け出した。
どうにかして飯にありつけると踏んでいたのだが、どうやら見当違いだったらしい。
だが、魚は確実にある。
廊下を走りながら横目で部屋を確認する。
先程の部屋から少し走った場所に食堂のような場所を見つけた。
きっと夕飯の時間になれば、魚をくすねるチャンスは幾らでもあるはずだ。
廊下の隅、ちょっとした隙間に俺は体を無理やりねじ込み、夕飯の時間になるのを待った。
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神永ビスコ(プロフ) - 凩奏詠さん» コメントを見るのが遅くなってしまいました……。ご指摘ありがとうございます!! (2016年11月15日 18時) (レス) id: f153aeb754 (このIDを非表示/違反報告)
凩奏詠(プロフ) - (偽の苗字)が変換されずそのままになってますよ (2016年9月10日 22時) (レス) id: e22f7985b6 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 今晩は。まずは、ここまでの話、お疲れ様です。次回からの話も楽しみです! 御園は確かに!!弟に欲しいですね♪もれなく脱ぎ癖のあるリリィが付いてきそうですが>w< (2016年8月29日 21時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
神永ビスコ(プロフ) - 玉露さん» コメント、ありがとうございます!なんと!趣味の合うお方が!サーヴァンプ、クロのあの気怠げな感じいいですよね〜。自分は御園を弟にしたいです…っ!(切実)お母様最強説は痛感しております……(苦笑)ありがとうございます! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 298cdf8811 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 91Daysも、サーヴァンプも両方知ってます♪アヴィリオ良いですねぇ。サーヴァンプはクロ、飼いたいと思ってみたり。更新の方は、無理なく。お母上様はある意味最強ですからw (2016年8月18日 22時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神永ビスコ | 作成日時:2016年7月26日 10時