エンド・カード3【JG】

【番外編】黒猫ヨルの冒険1 ページ43

最近エサが捕まえられない。

昨日もネズミに逃げられたばかりだ。



そんな不幸な俺は、魚屋の輸送用の箱の上で日向ぼっこをして気を紛らわせていた。



店主の客寄せの声が煩いが、空腹の俺にはそんなことは如何でも良かった。




薄く目を開けると、目の前には取れたて新鮮の美味しそうなアジが籠の上に積まれている。



店主は此方を見ていない。
今なら……



そっとアジに手を伸ばす。



「コラッ！！」



急に聞こえた怒号に思わず手を引っ込め体をビクつかせた。


顔を上げれば、目の前の店主は俺よりもつり上がった目で此方を睨みつけている。




「またこいつかっ！油断も隙もあったもんじゃねぇ！！」




バレてしまったか……


悲しげに顔を歪めてみてもこの店主は猫一匹に少しの慈悲すら感じないらしい。
全く、人間とやらは皆揃って心が狭い。




「また来るよ」




そう響いた声の方向へと目を向ける。


グレーのスーツを着て、目深に帽子を被った男が買い物籠を下げ帰って行くところだった。

俺の目線が集まったのはその男の買い物籠。



もしかしたら、魚を買ったかもしれん…。



くれることを期待して、こっそり後をついていく。
暫く後をついていくと、そいつは小洒落た煉瓦造りの建物へと入っていった。




その建物の裏に回って、空いている窓を探す。



あった…



丁度木の枝が窓枠の近くまで伸びている。
枝に登り勢いをつけて跳ぶ。



が、俺の体は窓枠まで届かずそのまま下へと落下していった。

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