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ダブル・ジョーカー5 ページ42

「……雪さん…?」


「……蒲生様……」



夕方、公園のベンチで仲間と情報交換をした帰り道で、目を真っ赤に腫らした雪さんに会った。


グラハムの屋敷から帰ってきたところだったのか、普段は見慣れない私服を着ている。


白いワイシャツに膝下までの黒いスカート。
そんな質素な格好にも拘らず、彼女の美しさを引き立てているようで、なんだか不思議だ。



「何か……あったんですか?」


「…あ……いえ……。…大丈夫です……」



全く大丈夫そうではないのに、彼女は無理矢理、顔に笑顔を貼り付けてこちらに微笑んで見せた。



「……雪さん、此方へ来てください。」


「…あ……あの…蒲生様……」


「今の貴方は大丈夫そうな顔をしてませんよ。落ち着くまで、そこで座ってましょう。」



そっと彼女の肩を抱き、ベンチへと座らせる。
さっき座っていたベンチの隣だ。


先程まで公園を走り回っていた子供の姿はもう無い。
薄暗くなった空にはキラキラと星が疎らに輝いている。



「……どうされましたか……?」


「張さんが……亡くなって……」



鼻を啜りながらポツリポツリと話し出す彼女に、驚くふりをする。
自分がその事件を起こした張本人と言えるわけが無い。
同情するように、そっと彼女の背中をさする。



「それは……お気の毒に……」


「…どうして…こんなことに……」



静かに瞳から涙を流す彼女の姿は心底美しい。
その姿に思わず手が出て、自分へと引き寄せた。

ピクリと彼女の肩が揺れたのがわかる。
至近距離で感じた彼女の匂いはどこか甘い。



「………すみません。私にはこれ位しかできなくて……。貴方の涙を見たく無いんです……。」


「…蒲生様……」



ギュッと自分のスーツを握る彼女に胸が少し高鳴るのがわかる。



もしかしたら、これはチャンスなのかもしれない。


スパイとして、女性の心を掴むチャンス。



「人目も気になりますし、取り敢えず移動しましょう。」



彼女の肩を抱き、自らの家へと足を進めた。

【番外編】黒猫ヨルの冒険1→←ダブル・ジョーカー4



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神永ビスコ(プロフ) - 凩奏詠さん» コメントを見るのが遅くなってしまいました……。ご指摘ありがとうございます!! (2016年11月15日 18時) (レス) id: f153aeb754 (このIDを非表示/違反報告)
凩奏詠(プロフ) - (偽の苗字)が変換されずそのままになってますよ (2016年9月10日 22時) (レス) id: e22f7985b6 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 今晩は。まずは、ここまでの話、お疲れ様です。次回からの話も楽しみです! 御園は確かに!!弟に欲しいですね♪もれなく脱ぎ癖のあるリリィが付いてきそうですが>w<  (2016年8月29日 21時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
神永ビスコ(プロフ) - 玉露さん» コメント、ありがとうございます!なんと!趣味の合うお方が!サーヴァンプ、クロのあの気怠げな感じいいですよね〜。自分は御園を弟にしたいです…っ!(切実)お母様最強説は痛感しております……(苦笑)ありがとうございます! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 298cdf8811 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 91Daysも、サーヴァンプも両方知ってます♪アヴィリオ良いですねぇ。サーヴァンプはクロ、飼いたいと思ってみたり。更新の方は、無理なく。お母上様はある意味最強ですからw (2016年8月18日 22時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神永ビスコ | 作成日時:2016年7月26日 10時

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