エンド・カード3【JG】

ダブル・ジョーカー3 ページ40

チェスは単純なゲームであるが故に、その分プレイヤーの性格が出る。

そこから得られたグラハムの性格とは、


単純

そのくせ、策に走りたがる。

人一倍猜疑心が強い。

見栄っ張り。

野心家。




そして今、自分の眼の前でチェス盤をじっと見つめる彼女の性格は、


聡明。

可憐で上品。

一挙手一投足に無駄がない。

控えめと見せかけて実は策士。




何とも賢いお方だ。
死角を作り、裏で駒を回す。


彼女のポーンが私のキングを今討ち取った。


「……驚きました。まさかポーンに負けるとは……」


「ハハハ、凄いだろうミスター蒲生。彼女のチェス裁きは一流だ。」


「あ……いえ……そんなことは……」



照れくさそうに頬を染め俯く彼女はとても可愛らしい。
チェスの駒を元の位置に戻した彼女は椅子から立ち上がり、スカートを払って皺を伸ばした。



「ありがとうございました、蒲生様。」


「いえ、こちらこそ。」



深々とお辞儀をして部屋を立ち去っていった彼女の後ろ姿を凝視した。




有崎 雪

それが彼女の名前。


幼い頃に両親を戦争で亡くし、それからは兄と二人暮らし。


彼女の兄、有崎 渉は外交官であった。
グラハムが日本へ来た時、通訳に付いたのが彼だった。

2人は意気投合し、よく夕食を共にする位には仲良くなっていた。


が、有崎 渉は15年前に病で亡くなった。
それからは彼の妹、雪が兄の代わりにグラハムの屋敷に勤めることとなった。



彼女の情報は調べ済みだ。
何かあれば脅してこちら側に寝返らせようかと思ったが、彼女は心からグラハムを信頼し慕っている。

裏切らせることはほぼ不可能だろう。



だから私はグラハム邸の内通者として、張(この館の使用人だ)を金で釣った。


これで館の中は自由に行き来できるはずだ。



メイドとグラハムにバレないようにそっとほくそ笑みながら私は屋敷を後にした。

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