【番外編】実井と2 ページ34
「………実井も、弾いてみるか?」
「………そうですね。弾けるにこしたことはないかもしれません。」
白羽が席を立ち実井を座らせ、後ろから実井を覆いかぶさるように手を重ねる。
目の前にある楽譜はどこか異国の楽譜。
実井が知らない時点でそこまで有名な曲ではないのだろう。
「じゃあまずここのメロディーだけど……」
いつも以上に白羽の顔が自分の顔と近い位置にある。
ガラにもなく自然と実井の顔に熱が集まる。
白羽が女だと分かってから、どうもどこか意識してしまう。
愛だとか恋だとか、そういうものに囚われるのはD機関員としては失格なのだが。
「………って、実井?聞いてる?」
「……あぁ、すみません…全然分からなくて…」
「まぁ、最初は難しいか……」
どう教えたらいいものかと悩む白羽の横顔をちらりと盗み見る。
外から差し込む光を、エメラルドグリーンの瞳が反射した。
端正に整った顔は男女関係なく慕われる筈だ。
そんなことを考えながら、実井は手元の適当な鍵盤を押した。
ポロン、という音とともにまた風が部屋に立ち込めた。
生暖かい風が夏の訪れを表している。
きっとこの研修が終われば僕らはきっと、もう2度と会うことなどなくなるのだ。
世界各地へ暗躍し、名前も経歴も、すべてを欺き、ここに帰ってくることもないかもしれない。最悪の場合死ぬかもしれない。
そんな思いの中で鳴らした音は、何の音程かわからなかったが実井の脳裏にしっかりと刻まれた。
2度と、この時を忘れぬように。
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(今を生きれば、それでいい。今想えばいい。きっと未来にこの想いを繰り返すことはないのだから。)
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神永ビスコ(プロフ) - 凩奏詠さん» コメントを見るのが遅くなってしまいました……。ご指摘ありがとうございます!! (2016年11月15日 18時) (レス) id: f153aeb754 (このIDを非表示/違反報告)
凩奏詠(プロフ) - (偽の苗字)が変換されずそのままになってますよ (2016年9月10日 22時) (レス) id: e22f7985b6 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 今晩は。まずは、ここまでの話、お疲れ様です。次回からの話も楽しみです! 御園は確かに!!弟に欲しいですね♪もれなく脱ぎ癖のあるリリィが付いてきそうですが>w< (2016年8月29日 21時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
神永ビスコ(プロフ) - 玉露さん» コメント、ありがとうございます!なんと!趣味の合うお方が!サーヴァンプ、クロのあの気怠げな感じいいですよね〜。自分は御園を弟にしたいです…っ!(切実)お母様最強説は痛感しております……(苦笑)ありがとうございます! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 298cdf8811 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 91Daysも、サーヴァンプも両方知ってます♪アヴィリオ良いですねぇ。サーヴァンプはクロ、飼いたいと思ってみたり。更新の方は、無理なく。お母上様はある意味最強ですからw (2016年8月18日 22時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神永ビスコ | 作成日時:2016年7月26日 10時