検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:54,081 hit

【番外編】実井と2 ページ34

「………実井も、弾いてみるか?」

「………そうですね。弾けるにこしたことはないかもしれません。」


白羽が席を立ち実井を座らせ、後ろから実井を覆いかぶさるように手を重ねる。


目の前にある楽譜はどこか異国の楽譜。
実井が知らない時点でそこまで有名な曲ではないのだろう。



「じゃあまずここのメロディーだけど……」



いつも以上に白羽の顔が自分の顔と近い位置にある。

ガラにもなく自然と実井の顔に熱が集まる。




白羽が女だと分かってから、どうもどこか意識してしまう。

愛だとか恋だとか、そういうものに囚われるのはD機関員としては失格なのだが。





「………って、実井?聞いてる?」


「……あぁ、すみません…全然分からなくて…」


「まぁ、最初は難しいか……」



どう教えたらいいものかと悩む白羽の横顔をちらりと盗み見る。


外から差し込む光を、エメラルドグリーンの瞳が反射した。
端正に整った顔は男女関係なく慕われる筈だ。




そんなことを考えながら、実井は手元の適当な鍵盤を押した。



ポロン、という音とともにまた風が部屋に立ち込めた。



生暖かい風が夏の訪れを表している。





きっとこの研修が終われば僕らはきっと、もう2度と会うことなどなくなるのだ。

世界各地へ暗躍し、名前も経歴も、すべてを欺き、ここに帰ってくることもないかもしれない。最悪の場合死ぬかもしれない。



そんな思いの中で鳴らした音は、何の音程かわからなかったが実井の脳裏にしっかりと刻まれた。





2度と、この時を忘れぬように。





▼▼




(今を生きれば、それでいい。今想えばいい。きっと未来にこの想いを繰り返すことはないのだから。)




▼▼

【番外編】波多野と→←【番外編】実井と



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (45 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
66人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

神永ビスコ(プロフ) - 凩奏詠さん» コメントを見るのが遅くなってしまいました……。ご指摘ありがとうございます!! (2016年11月15日 18時) (レス) id: f153aeb754 (このIDを非表示/違反報告)
凩奏詠(プロフ) - (偽の苗字)が変換されずそのままになってますよ (2016年9月10日 22時) (レス) id: e22f7985b6 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 今晩は。まずは、ここまでの話、お疲れ様です。次回からの話も楽しみです! 御園は確かに!!弟に欲しいですね♪もれなく脱ぎ癖のあるリリィが付いてきそうですが>w<  (2016年8月29日 21時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
神永ビスコ(プロフ) - 玉露さん» コメント、ありがとうございます!なんと!趣味の合うお方が!サーヴァンプ、クロのあの気怠げな感じいいですよね〜。自分は御園を弟にしたいです…っ!(切実)お母様最強説は痛感しております……(苦笑)ありがとうございます! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 298cdf8811 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 91Daysも、サーヴァンプも両方知ってます♪アヴィリオ良いですねぇ。サーヴァンプはクロ、飼いたいと思ってみたり。更新の方は、無理なく。お母上様はある意味最強ですからw (2016年8月18日 22時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:神永ビスコ | 作成日時:2016年7月26日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。