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エンド・カード38 ページ29

間髪入れずに自然と放たれた言葉に目を丸くした。


好意を持たれていたことに驚いたわけじゃない。
どちらかと言うと、この間までのなよなよとした彼女の面影が何処かへ行ってしまった方に驚いている。
今までの彼女なら、その2文字を出すことすら相当時間がかかるはずだ。



「……え」

「御幸君が…私のこと、そういう風に見てないのは分かってる………。でも、ここで言わないで後悔するのは、絶対に嫌なの!」

「………うん…」

「…だから……ごめんなさい」



謝罪の言葉と同時に、クビに巻きつけていたネクタイを引っ張られた。
決して強くない力であったが、あまりに突然のことで体勢を崩した。



唇に触れた柔らかいものが何なのか気づくのに、そう時間は要さなかっただろう。
いつもより近い彼女の顔は真っ赤だ。




「……………」

「……………」



唇が離れて、互いに無言になる。
彼女は顔を真っ赤にして俯き、私はそんな彼女をじっと見つめた。



御幸啓介という人物は、きっと、彼女の中での存在が大き過ぎたのだ。

私は決して目立とうとしていたわけではない。
最初のうちは新入生を珍しがって、取り巻きもそれなりにいたが、存在感を薄めれば、寄ってくる人も少なくなった。


でも、彼女はいつも側にいた。


人のことをよく見ていると、思った。
加えてあんなハプニングがあったんだ。
彼女の中に『御幸啓介』は存在を確かに確実に、しっかりと、刻んだのだ。





遠くから此方を見つめる視線を感じる。
結城中佐だ。


彼が、待っている。






「………ありがとう。さようなら……」





最後に抱きしめた彼女の体は触れたら壊れてしまいそうなくらい細くて、その瞳はあまりにも純粋で、もう2度と会いたくないと深く深く、思った。



: : :



「残らなくて良いのか?」



飛行機に乗り込み、上着を脱いだところで隣の中佐から声がかかった。

大方先程のことだろう。
彼女の顔を見て、少しでも心が揺らいだ自分をぶん殴りたい。




「……僕は同性愛者ではありませんしね……。帰りますよ。」


「そうか……」




それ以上の会話はない。
自分の顔の上に帽子を置き、顔を隠す。
薄暗くなった視界に目を閉じればそこには完全な闇が広がる。





薄れゆく意識の中で全ての気持ちに別れを告げた。


次の任務の為に。

スパイとして生きていく為に。





さよなら、兄さん。




さよなら、エミリー。









さよなら御幸啓介。

*→←エンド・カード37



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神永ビスコ(プロフ) - 凩奏詠さん» コメントを見るのが遅くなってしまいました……。ご指摘ありがとうございます!! (2016年11月15日 18時) (レス) id: f153aeb754 (このIDを非表示/違反報告)
凩奏詠(プロフ) - (偽の苗字)が変換されずそのままになってますよ (2016年9月10日 22時) (レス) id: e22f7985b6 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 今晩は。まずは、ここまでの話、お疲れ様です。次回からの話も楽しみです! 御園は確かに!!弟に欲しいですね♪もれなく脱ぎ癖のあるリリィが付いてきそうですが>w<  (2016年8月29日 21時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)
神永ビスコ(プロフ) - 玉露さん» コメント、ありがとうございます!なんと!趣味の合うお方が!サーヴァンプ、クロのあの気怠げな感じいいですよね〜。自分は御園を弟にしたいです…っ!(切実)お母様最強説は痛感しております……(苦笑)ありがとうございます! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 298cdf8811 (このIDを非表示/違反報告)
玉露(プロフ) - 91Daysも、サーヴァンプも両方知ってます♪アヴィリオ良いですねぇ。サーヴァンプはクロ、飼いたいと思ってみたり。更新の方は、無理なく。お母上様はある意味最強ですからw (2016年8月18日 22時) (レス) id: a93b6ad801 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神永ビスコ | 作成日時:2016年7月26日 10時

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