エンド・カード3【JG】

エンド・カード28 ページ19

「は？」

開いた口がふさがらない、というのはこういう事を言うのか、とAと渉は実感した。


目の前の男の言葉が理解できない。

頭がその言葉の意味に追いつかない。



「君達の母親は実に優秀なスパイだった。日本に渡ったのも勿論情報収集の為だ。だが、そこで思わぬハプニングが起こった。


彼女はある日本人男性に惚れ込みそのまま結婚したんだ。」




呆然としているにも関わらず、男の言葉は2人の頭に清水の如く染み込んでいく。

一言一句逃すことなく、言葉が声が、彼等の頭を侵食していった。




「私に報告なしにただ一枚手紙を寄越して彼女とは連絡が取れなくなった。

『私はこの国を裏切りたくない。だからスパイは辞めます』と。」




デュランは顔を歪ませた。

嫌なことでも思い出すような、嫌悪と憎しみを含んだ感情が目に見えるようだった。




「女はスパイには向いていないんだ！直ぐに感情に動かされる！これだから女は使えない！


だから私は彼女へのちょっとした復讐心でお前達に手を出した。」





女は感情に動かされやすい。故にスパイに向いていない。



それはD機関が男のみを採用する理由と同じだ。



シュナイダー殺しの件の安原ミヨコがいい例だ。



デュランはAと渉の母親を失敗作だと見限り、その子供に手を出そうとした。



渉は男だった。
生まれ持った優れた洞察力と反射神経をデュランは気に入り、彼に近づこうと計画していた。


が、然し。その前に邪魔が入った。


渉はある男の元に弟子入りをしたのだ。
杖を突き足を引きずりながら歩く男。




仕方なく渉は諦めデュランはその妹のAに目をつけた。


然し所詮は女。彼女もまた感情に動かされこちらの思うように動くはずがない。





そこでデュランは思いついたのだ。
Aの心を思うままに動かす方法を。

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