短編集

恒例写真：2 ページ49

撮ったばかりの写真を確認して「ほらぁ！」って見せてくる角度は決まって自然な上目遣い。
こんな至近距離で振り向いたらチュウしちゃうよ？
そんな言葉出そうなくらいの距離感。
側から見れば単なるバカップルのお戯れだ。

「目ぇ見開いただけじゃん。」
「やだ。可愛いいのちゃんを撮るのが僕の使命だもん。」
「はいはい。じゃあ、もう一回ね。今度はちゃんと撮るから。」

「ほんとかなぁ....。」なんて言いながら再びスマートフォンを構える知念に、より一層顔を近づける。

「撮るよ〜。」

先ほどと同様に可愛い顔を作るとタイマーがカウントを始める。
そして“１”になったところで、これまた先ほどと同様に俺が動く。

−カシャ

「ちょ.....っ？！」
「ふふ、ほっぺごちそうさま。」

「....もうっ。」なんて怒ってるけど、真っ赤に染まった耳とその声色で、全く怒っていないのがわかるし、なんなら写真を確認してはにかんでる顔は、嬉しさを必死に隠そうとしているようにしか見えない。

「...これは出せないし、仕方ないからさっきので我慢するか...。」


ぽやぽやした口調でそう呟きながら、二枚目の写真もしっかり保存するところがまた天邪鬼で可愛い。

「それ出さないなら消せばいいのに。」

ちょっとした意地悪を言うと、口をちょこっと尖らせて、相変わらずの上目遣いでこちらを振り向いたかと思えば、「やだっ。」とすぐに前に向き直り「ふふっ。」と笑う。
....。
ねぇ、なにそれ。
可愛すぎるんだけど。
可愛すぎてどうにかなりそうなんだけど。
悔しいから余裕な振りして耳許で囁いてやる。

「それ、俺にもちゃんと送って。」



end.

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