安室透にデコチューされるところから始まる話

＊６０【大切な人】 ページ21

＊赤井



《……安室くんには気をつけろ》


結局、その言葉の本当の意味を、Aに伝えることができなかった。

Aの家の玄関の扉を開け、外に出てから数分。
俺はさっきの出来事を思い出しながら、ゆっくりとマンションの廊下を歩いていた。

Aはきっと、あの言葉に何か大切な意味が含まれていることには気がついているだろうが、その意味が何かには気がついていないだろう。
なにせ、俺はまだ彼女にあることを伝えられていないのだから。

そんなことをぼんやりと考えながら、エレベーターのボタンを押す。


「一体、いつまで黙っているつもりなんだ…」


自分自身の行動に呆れ、はぁ。と小さくため息をついた。

チーンと音がなり、エレベーターがこの10階のフロアに着いたことを知らせた。
エレベーターの扉が開いたため、そこへ足を踏み入れる。

言えるわけがなかった。
お互い無自覚かもしないが、Aと安室くんは、言い合いをしながらもどこか幸せそうな様子だった。
そんな様子の彼女に伝えられるはずがなかったのだ。

彼が、安室透という男が、あの組織の幹部であるバーボンだということを。
すなわち、彼とAは敵対関係になってしまうかもしれないということを。

最悪なことに、Aの兄、晃大を撃った男は、酒の名前がコードネームとなっているあの組織とつながっていたのである。

エレベーターの扉が閉じて、ゆっくりと降下し始める。

あの男と組織との関係はお互いに最大の取引相手。そのため、両者ともに相手を失えば相当大きな損害になる。
それと同時に、お互いが強い関係で結ばれているからこそ、我々がどちらか片方を捕まえることができたなら、もう片方も芋づる式に逮捕できるほどの証拠を握ることができ、今よりもはるかに捕えやすくなるらしい。


何が言いたいかというと、つまり…

あの男の犯した罪を知っているAを、
あの男から組織についての情報を抜き取ろうとしたFBI捜査官の晃大を兄にもつAを、
あの男と強いつながりのある組織が、
見逃して生かしておこうとするはずがないのである。




※作者は頭が弱いです。作者は頭が弱いです(2回目)。

なので、こじつけているところがあったりしますが、どうかあたたかい目で、細かいところは気にせず、ゆる〜くお読みください。

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