ピアノとバレー (白布 賢二郎) 3

観察 ページ47

『There must have been something between Jim and Cathy.They haven’t talking to each other at all today.』


先生に指名されたすぐあとに、あかりちゃんはスラスラとそう答えた。


癖のない、聞き取りやすい発音。


あかりちゃんはとても英語が上手だ。



「Oh・・流石、素晴らしいね。Thank you.」



・・・こんなの・・私できない。


予習してなかったからこんなにすぐ訳せないし、発音だって、・・・


・・英会話でも習おうかな。






それから3時間目まで、あかりちゃんは数学しかあてられることはなく、


その時も淡々と答えを導き出していた。





それに比べて、私は・・・、



竹「余に問ふ何の意ありてか碧山に住むと。山本さん。訳してください。」



国語の予習もしてなかった私は、


もう慌てに慌てまくって。



奈「余？あ、私に、聞いた、えー、・・なんの意味があって、碧山に住んでいるのかと・・・」



ってしどろもどろに答えたら、竹田先生の眉間にシワが寄って、



竹「・・・訳せていない所があります。予習、きちんとしましたか？」


奈「あ、と、途中までしか・・・」



そんな、嘘までついて。



竹「・・正しくは、私に尋ねた、どんな考えがあって緑の深い山中に住んでいるのかと。です。碧山は緑の深い山と______」



隣の白布くんも意識してたし、


顔から火が出るほど恥ずかしかった。



・・・もう、なにやってんだろ。




結「奈々、いつまで落ち込んでんの。体育館行くよ。」


奈「はあーい・・・」



4時間目は体育館だ。


体育は3クラス合同。


今日から球技大会にむけて、男子はバスケ、女子はバレー。


・・私の運動神経は中の下。


だから体育でアピールすることは不可能だ。


私って、何が出来るんだろう・・・


自分に失望しかけていたとき、


隣のコートに笛の音が鳴り響いた。



女「あっち試合はじまったね、」



クラスの女子を2チームに分けて、試合練習。


隣のコートのAチームには運動神経抜群の芹那ちゃんに、バレー部のの1人、


そしてあかりちゃんもいる。



2組のAチームと試合のようで、


相手のチームからアンダーハンドのサーブが打ち放たれた。


アウトの瀬戸際あたりまで飛んできたサーブを、バレー部の子がかろうじて上げる。


再び宙を舞ったボールはあかりちゃんの頭上あたりに落ちるようだ。



「あかりちゃーん！芹那にトスあげて！」


『えっ、』


芹「あかりこっちー！」

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